ハルムスの世界

ハルムスの世界

ハルムスの世界

『ハルムスの世界』ダニイル・ハルムス〈ヴィレッジブックス モンキーブックス〉
待望のハルムス短篇集! と思ったら、2冊目だったのね。

 収録作品
・「青いノート No.10」
・「出来事」
・「落ちて行く老婆たち」
・「ソネット
・「ペトロフとカマロフ」
・「眼の錯覚」
・「プーシキンゴーゴリ
・「指物師クシャコフ」
・「長持」
・「ペトラコフの身の上に起きた出来事」
・「殴り合いの話」
・「夢」
・「数学者とアンドレイーセミョーノヴィチ」
・「門番を驚かせた若い男」
・「心の準備のできていない人が突然新しい考えに出会ったときにどうなるかを示す四つの例」
・「失くし物」
・「マカーロフとペーテルセン No.3」
・「リンチ」
・「出会い」
・「失敗に終わった上演」
・「ポン!」
・「最近、店で売られているもの」
・「マシュキンはコシュキンを殺した」
・「夢が人間をからかう」
・「狩人」
・「歴史上のエピソード」
・「フェージャーダヴィドーヴィチ」
・「プーシキンについてのエピソード」
・「とても気持ちのいい夏の日の始まり(交響曲)」
・「パーキンとラクーキン」
・「〈ひとりの男がいた〉」
・「交響曲第二番」
・「〈親愛なるニカンドルーアンドレエヴィチ〉」
・「〈ひとりのフランス人にソファがプレゼントされた…〉」
・「プーシキンについて」
・「四本足のガラス」
・「〈眼に小石の刺さった、背の低い紳士が…〉」
・「現象と存在について No.1」
・「現象と存在について No.2」
・「〈あるエンジニア〉」
・「スケッチ」
・「講義」
・「〈本物の自然愛好家〉」
・「通りで起きたこと」
・「レジ係」
・「物語」
・「〈ひとりの男が干しエンドウばかり食べているのに飽きて〉」
・「〈みんなお金か好き〉」
・「朝」
・「〈午後二時にネフスキー大通りで〉」
・「騎士」
・「〈イヴァン・ヤーコヴレヴィチ・ボーボフ〉」
・「おじいさんの死」
・「寓話」
・「邪魔」
・「〈公案〉」
・「画家と時計」
・「卑しい人物」
・「〈私はカプチン会の坊主と呼ばれている〉」
・「〈私は塵を舞い上げた〉」
・「名誉回復」
・「権力」
・「転落」
・「私の妻に起きたこと」
・「多面的な診察」
・「〈なぜみんなが私のことを天才だと思うのか〉」
・「〈私たちは部屋が二つあるアパートに住んでいた〉」
・「関係」

まさに、ナンセンスとアヴァンギャルドを説明するなら、これ1冊読ますべし、という内容。
長くても数ページというショートショートばかりで、正直ワケがわからない作品ばかりなんだけど、読む人それぞれの琴線に触れる作品があるはず。ソローキンに通じるエログロな作品も少なくない。
お気に入りは、「ソネット」「指物師クシャコフ」「長持」「夢」「マカーロフとペーテルセン No.3」「リンチ」「最近、店で売られているもの」「フェージャ・ダヴィドーヴィチ」「とても気持ちのいい夏の日の始まり(交響曲)」「〈ひとりの男がいた〉」「講義」「〈親愛なるニカンドル・アンドレエヴィチ〉」「レジ係」「〈午後二時にネフスキー大通りで〉」「邪魔」「〈私はカプチン会の坊主と呼ばれている〉」「名誉回復」「私の妻に起きたこと」「〈なぜみんなが私のことを天才だと思うのか〉」あたり。ただ、読んだときは何か感じたとしても、再読すると「?」な作品も少なくない(笑)
色々と読み取ることはできると思うんだけど、スターリン政治下の唐突に連行されてしまうという不条理感がそのまま作品に反映されているのかな。また、いくら本人だと訴えても、周りがそれを認めなければアイデンティティを喪失する作品も少なからずあり、社会に漂っていた恐怖の空気を感じられずにはいられない。「みんな」の視線もポイントかな。
まぁ、深読みせずとも、変な話が読みたいなら、オススメ。