エデン

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エデン

『エデン』近藤史恵〈新潮社〉
サクリファイス*1の続編。

あれから三年――。白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。だが、すぐさま彼は、チームの存亡を掛けた駆け引きに巻き込まれ、外からは見えないプロスポーツの深淵を見る。そしてまた惨劇が……。

前作が割とミステリ的な文法で描かれていたし、あらすじもミステリっぽく書かれているんだけど、今回は完全に自転車小説。
物語そのものより、ツール・ド・フランスの概説本として感心してしまった(笑)。普通のツール本よりも、雰囲気はわかりやすいんじゃないかなぁ。レースに興味がある人は、これを読んで7月に備えるのもいいかも。
それはさておき。
自転車の楽園であるツール・ド・フランス。だが、そこには禁断の実が常に誘いをかけ、しかもその誘いを拒絶してもいつ楽園を追放されるか分からない厳しい世界。それでもなお、彼らはそこを目指し、留まろうとする。ついに憧れのツールに立った誓のアシストとしての生き様、クライマーといての戦い、プロレーサーとしての懊悩が描かれる。ラストよりも、ちょっと手前のスカウトで「ああ、ついにマイヨを取れるチームに……」と涙。
それぞれのエピソードやキャラが色々と脳内補完される。ニコラはバキューンか? 深雪のモデルはNacoさん? 最近の日本人選手の活躍とダブらせるのもいい。個人的には、展開は2007年のラスムッセンを思い出しちゃったなぁ。
ケータイ小説ということもあるのか、リーダビリティは最高。自転車好きと、今年ツールを観てみようかという方にオススメ。


どうでもいい蛇足だけど、イメージ写真ということはわかってるものの、コフィディスに入ったのかと思っちゃった。