LE CONCERT

オーケストラ!』鑑賞

1980年、ロシア・ボリショイ交響楽団から多くのユダヤ人が連行され、それに反対した天才指揮者のアンドレイも楽団を解雇されてしまう。アンドレイはいつか復職する日を夢見て、30年にもわたり劇場清掃員として働いていたが、ある日パリのシャトレ座から送られてきた出演依頼を見つけ、偽のオーケストラを結成することを思いつく。

音楽の素養はゼロですが、落ちぶれヒーロー好きとしては見過ごせない内容なので行ってきました。
評判がいいのは聞いてたけど、公開から2ヶ月近く経って、まだ結構入ってたなぁ。


コメディ映画で、例えるなら『メジャーリーグ』音楽版。いちいち笑えるんだけど、なんか冗長。ハリウッド映画に慣れちゃってる目には少々やぼったい、というか色々と粗が見えてしまう。
この手の作品は、仲間探しの奔走ぶりが山の一つになることが多いけど、この作品ではひじょうにあっさり。落ち目の今と、一流だった30年前の両方があまり描かれないため、そのギャップの面白みも少ない。現状の描写が少ないから、元団員たちのパリでの行動が唐突に見えてしまうし、30年前のレナに対する親愛も全く出てこないので、ラストの説得力への説得もイマイチ。
ところが、音楽の使い方は見事。物語の中核になるのがチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲で、ちゃんと流れるのもその1曲、しかもリハもやらないから、最後のクライマックスまで演奏されない。ドラマの情感の高まりと曲の起伏が同調され、時間と距離を超えたカットバックによって、その1曲が長い人生と同等として描かれるさまに涙腺やられる。ラストの演奏に至るための2時間という構造なのかな。


団員たちのエピソード(個人的には超絶技巧のジプシーのおっちゃんが好き)はもっと入れて欲しかったけど、ロシア人の描き方は怒っていいレベルのひどさ(笑)。金に汚く、時間も約束も守らない、いい加減な田舎者という描写。ホントにああなのか、ヨーロッパではああ思われているのか。パスポートの偽造とか適当すぎる。アンドレイの奥さんの仕事もよく分からないし。サクラ・ブローカー? 


改めて考えるとシェイプアップが必要なんだけど、とにかくラストで全てねじ伏せられる。
ところで、邦題は『コンサート!』の方が良くない? いわゆるコンサートと協奏曲を引っ掛けてるんじゃないの?