Decoding the Heavens: Solving the Mystery of the World's First Computer

アンティキテラ古代ギリシアのコンピュータ

アンティキテラ古代ギリシアのコンピュータ

『アンティキテラ−古代ギリシアのコンピュータ』ジョー・マーチャント〈文藝春秋
2000年前の古代ギリシア船から引き上げられた遺物と聞いて、どんなものをイメージするだろう? ブロンズ? 大理石?
元ムー民としては常識的に知ってたものの、昔見た荒いモノクロ写真では、漠然と石で作った歯車だと思い込んでたんだけど、こんなにメカだとは思ってませんでしたよ!
機械っぽい、ではなく、ホントに機械なんだよね。
写真を見れば、古代ギリシアのイメージが破壊されるはず。

紀元前150〜100年頃に作られたと推測され、複雑な歯車を持った機構は、その後1000年以上現れない、まさに真のオーパーツ


発見されたのは100年前のアンティキテラ沖、海綿取りのダイバーによって。
それ以降、時代を超越した謎の機械を解き明かそうと、何人もの学者が挑む姿は、数学の難問証明のそれと同じ。違うのは、完璧な正解が(おそらく)誰にも得られないこと。それでも、新たな自説を構築し、テクノロジーによって新発見がされていく。挑戦者の中では、権力も財力もなく、裏切られてばかりの学芸員ライトを応援しちゃう(笑)
また、研究者以外にもクストーやアーサー・C・クラークが興味を持ち、ムー民のヒーロー、デニケン先生が自体を引っかき回していく(笑)


機能が明かされるのは、21世紀に入ってから。その正体は?
結果がわかればけっして「場違いな工芸品」ではないし、ブロンズをリサイクルしていた古代ギリシアを考えれば、おそらくこれは最高級品だったかも知れないが、唯一無二ではないと推測できる。もしかしたら、一家に一台レベルのありふれた道具だから記録に残されていない可能性だってある。
でも、「2000年前のコンピュータ」のロマンは薄れないなぁ。


個人的には、クラークの、「この知識が継承されていたなら、産業革命は100年以上も早まり、いまごろ人類は近くの星に到達していたはずだ」と言うつぶやきには反対。
アンティキテラの機械によって、観念的なことには強いが、技術的なことには興味がなかったギリシアというイメージは正されるわけだけど、ヘロンの発明品とか見ると、やはり古代ギリシア人は面白アイテム(笑)を作っていたような気がするなぁ。