メルキオールの惨劇

メルキオールの惨劇 (ハルキ・ホラー文庫)

メルキオールの惨劇 (ハルキ・ホラー文庫)

『メルキオールの惨劇』平山夢明〈ハルキ・ホラー文庫〉

人の不幸をコレクションする男のエージェントとして動く「俺」。今度のターゲットは、自分の子供の首を切断した母親。まだ首は見つかっておらず、それを是非手に入れたい。彼女は出所して、今は田舎で二人の息子と暮らしている。彼らに近づくことに成功したが、彼女はとても子供を殺したようには見えず、二人の息子は異様。彼らにはある秘密があり……

他人の不幸のエピソードとそれにまつわる品をコレクションするという、実に悪趣味なキャラクターがまず際立っている。そのエージェントである主人公が、まず出会うのが、鎖につないだ犬を振り回して散歩と称する白痴の巨漢。これにやられた。そして交渉相手が、我が子の首を切り落とした母親。
いつものように壊れた人々と鬼畜な所業が描かれるのかと思いきや、途中から予想外の方向にシフトして、ちょっと吃驚。個人的な感触としては、『スキャナーズ*1を思い浮かべた。壊れ具合は少なめ。
主人公の設定が少々消化不足な気もするけど、ラストが美しすぎる。あまりにも残酷な仕打ちと、優しすぎる眼差しの同居。このすべてから距離を置いた筆致はお見事。
『ダイナー』*2同様、料理は美味そうで、特に好きでもないピーナッツバターが食べたくなった(笑)