AFTER THE HOLE

体験のあと

体験のあと

『体験のあと』ガイ・バート〈集英社
『ソフィー』*1がアタリだったので、デビュー作にも着手。

校舎の片隅に、使われていない地下室を見つけた高校生たちが面白半分に、そこに食料を持ち込んで閉じこもろうということになった。発案者はマーティン、成績抜群ながら、おそるべきいたずらを思いつき、実行しては教師すら出し抜く、頭の切れるカリスマ。彼はこれを「人生の真実を知る実験」と呼び、五人の男女を中に残して、三日後に開けると言って外から鍵をかけた。最初は、ちょっとした秘密パーティーのつもりで、酒を飲んだりして楽しんでいた五人だったが、そのうちある不安がきざしてくる。鍵が開けられなかったら? 不安は現実となる。三日経っても鍵は開けられない。食物も尽き、水道も止められてしまった、恐怖がつのってゆく……

現在と過去を行き来する語り、会話文主体の構成など、『ソフィー』の原型的な作品。
ただ、登場人物が5人(+1人)と多く、なかなか見分けがつかず、それが語りの仕掛けのマイナスになっているような。また、『ソフィー』が各所にパーツが隠され、読み進めると同時に全体像が(おぼろげながらに)見えてくるのに対して、最後だけで引っ繰り返しちゃうのは、テクニックとしては弱いかなぁ。
まぁ、18歳のデビュー作なんで、多くを求めるのもよくないけど。
アーティストハウス*2から復刊されていて、加筆修正されているとか。