CRYSTAL RAIN

クリスタル・レイン (ハヤカワ文庫SF)

クリスタル・レイン (ハヤカワ文庫SF)

『クリスタル・レイン』トバイアス・S・バッケル〈ハヤカワSF1728〉

惑星ナナガダは300年前の出来事によりテクノロジーを失い、蒸気機関が生活を支えていた。人々はキャピトルシティを中心とした半島で暮らしていたが、山脈の向こうから、異形の神を崇めるアステカが侵攻してくる。記憶をなくしながらも漁師として平和に暮らしていたジョンは、混乱の中家族と離ればなれになり、彼自身もアステカ兵から命からがら逃げ延びる。劣勢のキャピトルシティの唯一のチャンスは、北の大地に残された300年前のテクノロジー、マー・ウィン・ジュンだった。しかし、アステカや謎の男ペッパーもそれを狙っており、その鍵はジョンにあった……

アステカの侵略、異形の神々の正体、300年前の真実、ジョンの記憶の秘密、ペッパーやスパイの目論見……と事件とガジェットは満載なんだけど、ただ出来事が流されているだけで、川を眺めているような読書感。
個々はけっしてつまらなくないんだけど、なんだろうなぁ、キャラクターたちが何が現れても驚かないから、読者にもワンダーがない。だから、家族と離ればなれになろうが、アステカのスパイが貼り付こうが、ワームホールが出てこようが、ラストで地球の現状が開かされようが、「あっそう」と何も感じない。
『ザ・テラー』*1に比べると、北への遠征もかなり淡泊。というか、てんこ盛りのアイデア一つ一つに感情的深みがないんだよね。
題名の使い方も、なんかもったいないなぁ。


続編が訳されても、少なくとも新刊買いはないかなぁ。
最近のハヤカワ文庫SFの新顔は、アタリが少ない……