DOUBLE TAKE AND OTHER STORIES

時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)

時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)

ロマンスを中心としたの時間SF日本オリジナルアンソロジー
古めの作品が多いんだけど、なかなか粒ぞろい。9篇中3篇が初訳。


 収録作品
・「チャリティのことづて」……ウィリアム・M・リー
 高熱で寝込んだ少年は、自分の意識が18世紀の少女とつながったことに気づく。
 お互い語り合うが、そのうち、彼女は魔女扱いされてしい……
 先鋒として、ひじょうにキャッチーな作品。
 『アフター0*1の「800年のメッセージ」は「愛の手紙」*2じゃなくて、これが原型か?
 ラストは直球でいいなぁ。
 ロ、ロマンスなんて興味ないんだからねっ!!


・「むかしをいまに」……デーモン・ナイト
 死から始まり、母親の胎内へと戻っていく人生。
 ある意味、普通の人生を描いてるだけなんだけど、SFだよねぇ。
 ライバーの短篇で似たようなのなかったっけ?


・「台詞指導」……ジャック・フィニイ
 美しいが、演技が今ひとつの女優。
 うまく行かずに悩む中、撮影で使うアンティークバスの試運転で、
 みんなで当時の衣装を着けて街行く人を驚かせようとする。
 しかし、何も気づかずに乗ってきた男が、彼女に一目惚れし…… 
 フィニイにしては、ノスタルジー成分控えめか?(笑)


・「かえりみれば」……ウィルマー・H・シラス
 目覚めたら、学生時代に戻っていた主婦。
 予習も復習も要らないと思いきや、全く勉強を忘れていて……
 そうだよなぁ。俺もリプレイできても、完全に忘れているはず。
 ホラ話タイプのオチは好みだけど、一番印象が薄い。


・「時のいたみ」……バート・K・ファイラー
 時間を遡ることを許されている時代。
 しかし、未来の記憶は消去されてしまうため、たいていは人生のやり直しはうまく行かない。
 目覚めると、10年後の体になっている男。
 かなり鍛えられているが、なぜ、戻ってきたのか?
 唯一の未来改変ものかな?
 結末がまた皮肉っぽくていいんだよな。


・「時が新しかったころ」……ロバート・F・ヤング
 あり得ない現代人の化石を調査するために、トリケラトプス型のタイムマシンで白亜紀にやってきた調査員。
 そこで、二人の少年少女を助ける。
 彼らは太古の火星人で、誘拐犯から逃げてきたらしい。
 敵は飛行機を持っており、なんとか出し抜こうとするが……
 ヤングの、(男から見た)女性の理想と純潔的な作品があまり好きじゃないんだよねぇ。
 これも例に漏れないんだけど、これまたラストは直球。
 べ、別にラブロマなんか(以下略)
 ところで、「たんぽぽ娘」は未読なんで、奇想コレクションを待ってるんだけど……


・「時の娘」……チャールズ・L・ハーネス
 母を憎悪している娘。
 彼女は未来を予言して金を稼いでおり、娘の行動も見抜いているようだ。
 母の恋人を奪おうとするが……
 1ページ目でオチは読めちゃうんだけど、美しいパズルの展開を見ているようで楽しめた。


・「出会いのとき巡りきて」……C・L・ムーア
 あらゆる冒険を味わってきた男。
 偶然出会った科学者の時間旅行の実験に志願する。
 いつとも知れぬ世界で出会った女が生まれ変わり続けていると悟った彼は、
 彼女を探して時間を跳び続ける。
 パルプ風味の時間もの。


・「インキーに詫びる」……ロバート・M・グリーン・ジュニア
 行き詰まっている音楽家
 20年前に別れた恋人がスランプの打開につながるはずだが、
 彼女との間に何があったのか記憶にない。
 久々に会いに行くことにするが……
 これを「SF短篇」というくくってしまうのはもったいない。
 パズルのような万華鏡のような、
 前面のような背景のような、
 様々な相反する要素の間で絶妙なバランスを取っているような作品で、
 しかも、読者にはその水面下を見せずに優雅に舞っている。
 個人的には、ミシェル・ゴンドリー*3の映像イメージ。


お気に入りは、「チャリティのことづて」「むかしをいまに」「時のいたみ」「インキーに詫びる」あたり。


どうでもいいけど、時間SF短篇と聞いて頭に浮かぶ題名が「ここがウィネトカならきみはジュディ」。この題名、最高に好き。