カンタン刑

カンタン刑 式貴士 怪奇小説コレクション (光文社文庫)

カンタン刑 式貴士 怪奇小説コレクション (光文社文庫)

『カンタン刑 式貴士怪奇小説コレクション』式貴士光文社文庫
表題作はあちこちに入ってるんで前から読みたかったんだけど、一番新しい短編集で着手。

収録作品

  • 「カンタン刑」
  • 「首吊り三味線」
  • 「渇いた子宮」
  • 「ヘッド・ワイフ」
  • 「おれの人形」
  • 「マイ・アドニス
  • 「血の海」
  • 「アイス・ベイビー」
  • 「メニエール蝉」
  • 「塵もつもれば」
  • 「鉄輪の舞」
  • 「東城線見聞録」
  • 「仕置猫」劇画作品。作画・上村一夫

誤解を恐れずに言うならば、女性の人格を無視し、人形以下の便利な性欲処理器具に変形させてしまうのが、鬼畜好きをひどくくすぐる。……やっぱ、誤解しないで。
エロ・グロが単なるおまけでなくて、物語と不可分になっているのがひじょうに魅力。


お気に入りは、
・「カンタン刑」
 カンタン刑の判決が下った極悪犯。
 せめて、死刑にしてくれと懇願するカンタン刑とは?
 これは最初の10ページくらいで本を閉じる人もいるでしょう。
 Gの拷問はけっこうきつい。
 こんなにすごい話を、最後でどうまとめるのかと思ったら、禁じ手か〜!(笑)
 でも、題名に色々かかってて、それは上手いね。グロいけど。


・「首吊り三味線」
 首つりに関する蘊蓄を語る男。
 その正体は?
 ラストがいまいちだけど、そこに至るまでの経緯と蘊蓄がなかなか楽しい。
 鬼畜だけど。


・「ヘッド・ワイフ」
 事故により、寝たきりになってしまった美しい妻。
 彼女と夫は、最近実験が成功した、首だけで生きる方法を取ることにする。
 これはラストは珍しくハッピーエンドだなぁ。結構笑えるし。
 グロテスクだけど。


・「おれの人形」
 物体を石にする能力を持つ男。
 彼は大学のマドンナの足を石化し、部屋に監禁する。
 『監禁淫楽』*1で既読なんだけど、エッセンスのみを取り出した感じで好きな作品。
 エログロ鬼畜だけど。


・「血の海」
 ある日、地球上すべての水が血液になってしまう。
 それを飲めと病気は治り、栄養も十分なため、文明は崩壊していく……
 個人的には、この短編集で一番気持ち悪かった。


・「鉄輪の舞」
 これ以上はないというほど、性格も気も合う夫婦。
 しかし、そのせいで徐々に鬱屈が溜まり……
 昼メロ系のドロドロから、オカルトミステリのラスト。
 伏線も貼ってあって、小説として面白かった。 
 やはり鬼畜だけど。 


・「東城線見聞録」
 塔京の胃毛袋から伸びる東城線の各駅と住民を紹介した記録。
 当て字から広がるイマジネーションの異世界
 よく乗っていた路線なんで、ひじょうに楽しかった。