莫言小説精短系列
- 作者: 莫言,吉田富夫
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2003/10/23
- メディア: 単行本
- クリック: 12回
- この商品を含むブログ (8件) を見る
またマイミクのオススメで着手。
収録作品
- 「竜巻」大風
- 「涸れた河」枯河
- 「洪水」秋水
- 「猟銃」老槍
- 「白い犬とブランコ」白狗秋千架
- 「蝿と歯」蒼蠅
- 「戦争の記憶断片」凌乱戦争印象
- 「奇遇」奇遇
- 「愛情」愛情故事
- 「夜の漁」夜漁
- 「奇人と女郎」神標
- 「秘剣」姑媽的宝刀
- 「豚肉売りの娘」屠戸的女児
- 「初恋」初恋
まともに中国文学を読むのはほとんど初めて。
海外に行かない人間にとって、非英語圏(英語圏もたいして知らないけど)の小説を読むと感じるのは、「知識」が「実体」を伴うこと。ラテンアメリカ文学を読んで初めて、南半球は本当に季節が逆なんだと実感した。それを説明するでなく、当たり前のものとして自然に描くのは、現地の作家ならでは。中文でのそれは「纏足」。完全に歴史トリビア以上でも以下でもなかったんだけど、本当に生活の中に存在し、しかもけっこう最近までいたのね。
それと同時に、文化大革命は歴史上の出来事ではなく、中国人にとってはまさに現実に起きたこと。作中でも文革自体がテーマになることはないんだけど、隅々までけっして逃れられない影を落としている。……なんだけど、やはり文革はまるで理解できない。
また、貧しい農村とそこに暮らす人々が描かれていて、厳しい生活ながらも、それが郷愁を呼ぶのかもしれないが、個人的には全く逆の感想。農村暮らしというものを体験したことがないからなのか、そこに描かれる全てがグロテスクに感じしてしまい、特に臭いが漂ってくる文章がかなりしんどかった。それだけ、現実に根を下ろした筆致ということなのかもしれないけどね。もやしっ子でスミマセンね(笑)
お気に入りは、
・「愛情」
生産隊で、15才の小弟は、20代半ばの何麗萍と白菜に水をやる担当になった。彼女は美しく、親が資本家で、大会に出るほどの武術の腕を持っていたが、文革により、村中から冷遇されていた。小弟はそんな彼女に恋心を抱くようになり……
初恋をテーマにした作品が結構あるんだけど、これが一番爽やか(?)かなぁ。
しかも、一番エロいと思う(笑)
・「豚肉売りの娘」
想像力豊かな少女。彼女は、豚肉売りの母と祖父が押すネコ車に乗って、市場まで一緒に行く。その途中に目にするもので、様々な想像を羽ばたかさせる……
題名からして、どの文節を取っても「ビビッ」と来るけど、そのトキメキどおりの作品。
ドリーミーな少女の一人称なんだけど、その奥底に漂ってくる暗い気配。
しかも中国なら実話かも……と思っちゃうのがポイント。
薦められたのはこの作品。またもや、心のプライベートな部分を見透かされてましたよ(笑)