Mrs. Caliban and other stories

ミセス・キャリバン

ミセス・キャリバン

『ミセス・キャリバン』レイチェル・インガルス〈福武書店
表題作にそそられて着手。


 収録作品
・「ミセス・キャリバン」Mrs. Caliban
 子供を失ってから、完全に夫婦関係が冷え切ったドロシー。
 彼の浮気にも動じなくなっていた。
 そんなある日、海洋研究所から逃げてきた蛙男が現れる。
 海陸両棲で、2メートルはあり、飼育員を殺したと報道されるが、
 ドロシーは穏やかな彼を匿い、再び生き甲斐を取り戻していくが……
 蛙男というガジェットが強烈で、まずそちらに目がいくけど、けっこう普通の話。
 全ての真実を知ってしまった後、ドロシーは人生をどう送っていくのか?


・「聖ジョージとナイトクラブ」St. George and the Nightclub
 ギリシア旅行にきた倦怠期の夫婦。
 夫が浮気をしたため、離婚は既定事実。
 そこで新婚夫婦と出会い、厳しい家庭で育ったため、初夜に悩む夫にアドバイスを与えるが……
 高熱に浮かされたうわごとのような読書感。
 なんとなく、ラストに希望があるような、ないような……


・「置き去りにされた男」The Man Who Was Left Behind
 一瞬にして、全ての家族を失ってしまった弁護士。
 アル中の浮浪者のような生活をして、公園のベンチで思い出に浸る日々……
 常に置き去りにされてしまう彼。最後で、合流が果たせたのか?


三作とも喪失と優しさを描いた物語。その優しさは、シニカルな慈悲に見えなくもないところが面白い。
個人的には、「聖ジョージとナイトクラブ」が一番好き。