DAS KIND

前世療法

前世療法

『前世療法』セバスチャン・フィツェック〈柏書房

弁護士のシュテルンは、元恋人の看護師カリーナから工場の跡地に呼び出された。一緒にやってきたのは10歳の少年ジーモン。彼は脳腫瘍で余命幾ばくもなく、死を慰めるためにカリーナが前世療法を受けさせたところ、15年前に人を殺し、その死体がここにあるというのだ。事実、死体は見つかり、他の前世での殺人も語り始める。さらに、シュテルンのもとに不気味な電話と信じられないDVDが……!

ミステリオタでもないのに、何故かちゃんと追ってるフィツェック三冊目。
サイコネタでエンターテインメント小説に徹し、ショッキングな一撃からぐいぐい引っ張られていく、リーダビリティの良さは相変わらず。
ジーモンの前世殺人に加え、シュテルンと前妻の生後間もなく亡くなった息子の映像、前世に見える事件なのか、それとも本当に生まれ変わりはあるのか、最後まで緊張感が保たれている。
ただ、やはり『治療島』には劣るなぁ。全登場人物が実はそれぞれ関係していた、というのは嫌いじゃないんだけど、ちょっと偶然の要素が強いのがな〜。前世での殺人というオカルト要素なだけに、その他の部分はシステマティックに構築して欲しかった。