RUMPOLE OF THE BAILEY

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『ランポール弁護に立つ』ジョン・モーティマー〈KAWADE MYSTERY〉
日本初のランポール短篇集

収録作品
・「ランポールと跡継ぎたち」Rumpole and the Younger Generation
 犯罪者一家の息子が強盗容疑で捕まる。
 逮捕の決め手は密告らしいのだが、
 その息子と彼から事件を聞かされたという密告屋の少年とは、
 代々続く犬猿の仲の悪い家族で……


・「ランポールとヒッピーたち」Rumpole and the Alternative Society
 麻薬の囮捜査で掴まったヒッピーの美女。
 警察の汚いやり方を陪審に訴える戦略を練るが……


・「ランポールと下院議員」Rumpole and the Honourable Member
 党員の強姦容疑で掴まった下院議員。
 ランポールは、その女性がトラブルメーカーだったという戦略を採るが……


・「ランポールと人妻」Rumpole and the Married Lady
 ずっと夫からメモでしか会話をしてもらえないという妻。
 彼女の目的は夫を法定に引きずり出して喋らせること。
 一方、ランポールの同僚も同じような悩みを抱えた夫の依頼を受けていた……


・「ランポールと学識深き同僚たち」Rumpole and the Learned Friend
 郵便局の金庫爆破容疑で掴まった男。 
 火薬に指紋がついていたというのだ。
 ランポールは所長の補佐をすることになるが……


・「ランポールと闇の紳士たち」Rumpole and the Heavy Brigade
 裏社会の噂がある兄弟。
 その末弟に殺人容疑がかかる。
 彼の兄弟たちは、「責任能力なし」で進めて欲しがるが……

小咄系短篇好きとしては、なかなか楽しめた。
法廷ものというと、圧倒的不利の中、「異議あり!」で大どんでん返し的なイメージだけど、ランポールに限ってはそれは期待できない。むしろ、パズルでないからこそ、各々エゴが見えて面白い。
意外な証拠を持ってくるのではなく、性格に訴えて弁護をすることが多く、それも早く帰りたがっている判事には早めに切り上げようとしたり、事件と関係ない部分で(笑)。
弁護をする側もされる側もどうも真面目に見えず、さらに自分勝手。そもそもランポール自身が狡く、頑固で皮肉屋、権威に逆らわずにはいられず、法廷を楽しむべきショーだと思っている。
依頼人たちは殺人や強姦、強盗などの容疑者で、ランポール自身、彼らの無罪を信じているわけではないが、プロの弁護士として正義でなく、フェアを求めて依頼人たちのために奮闘する。しかし、いつも勝てるわけでもなく、また勝っても負けてもほろ苦い事情が垣間見える。それでもあまり深刻にならないのは、ランポールの人間臭さのお陰。
どれも良かったけど、個人的お気に入りは、「ランポールと下院議員」「ランポールと人妻」「ランポールと学識深き同僚たち」あたり。
初めて読んだけど、他にも是非出して欲しい。