LA CLASSE DE NEIGE

冬の少年

冬の少年

『冬の少年』エマニュエル・カレール〈河出書房新社
嘘をついた男』『口ひげを剃る男 (Modern & Classic)』とアタリだったので(猛毒だったけど)着手。

内気で、想像力逞しいニコラ。スキー教室に参加するが、荷物を父のトランクに忘れてきてしまう。なかなかとけ込めないニコラだが、様々な場面でドラマチックな夢想に怯え、また浸る。そんな中、付近の子供が行方不明になる事件が発生し……

期待どおり(笑)の嫌な話。
荷物に気づいた父はすぐに戻ってきてくれるはずなのに、全くその気配はなく、連絡もつかない不条理な展開にいきなり投げ込まれる。そして、それを補完するかのようにニコラのリアルな妄想。
これまで読んだ2作が、嘘、妄想が現実を捻れさせ、それが事実に成り代わってしまう話だったけれど、本作はそこまで夢想力は強固ではない。しかし、少年ならではの、不幸になるが故の優越感妄想、思春期前の同性への憧れの夢想が生々しい。
また、ニコラは『嘘をついた男』ほど制御力を持っていないにもかかわらず、フォローできないのに嘘にディティールを加えていって、嘘に酔う描写にかなり冷や冷やさせられる。しかし、2作とは別の意味で、その嘘が現実を浸食して……
ニコラの夢想は、現実の描写からいきなりシフトするため、一瞬足場を見失う。彼の妄想にリアリティがある反面、何より現実感がないのが、ニコラの家族。断片的にしか出てこないけど、その存在はひじょうにいびつで不気味。SFなら、本当に実在するのかと疑うところ。最後まで読めば不条理に意味があるのがわかるものの、それでも歪みが消えない部分もあり、個人的にはそれが一番気持ち悪かった。
映画化されているそうだけど、知りませんでした。