THE KNIFE THROWER

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『ナイフ投げ師』スティーヴン・ミルハウザー白水社
ミルハウザーは短篇をいくつか読んだだけなんで読んでないんで、最新刊が古本屋で手に入ったから着手。


収録作品
・「ナイフ投げ師」The Knife Thrower
 天才的なナイフ投げ師が町にやってくる。
 しかし、彼には様々な不穏な噂が。
 人々は期待と不安を抱いてステージを見に行く。 


・「ある訪問」A Visit
 九年間音信不通だった親友から、結婚したからきてくれと手紙をもらう。
 すごい田舎で、そこにいた彼の妻とは……


・「夜の姉妹団」The Sisterhood of Night
 少女たちが夜中、密かに集まって何かしているという。
 様々な憶測が流れるが、真実は杳として知れない。
 はたして?


・「出口」The Way Out
 不倫相手とベッドにいたところを、彼女の夫に見つかった男。
 翌朝、夫の友人とやらがやって来る。
 夫は話がしたいらしいのだが……


・「空飛ぶ絨毯」Flying Carpets
 ついに空飛ぶ絨毯を手に入れた少年。
 夏の間、彼はそれで飛び回るが……


・「新自動人形劇場」The New Automaton Theater
 自動人形による劇が盛んな街。
 そこに現れた希代の天才人形師。
 しかし、彼は突如、10年にもわたって劇をやめてしまう。
 そして、ついに復活するが、その新作は……


・「月の光」Clair de Lune
 眠れない少年。
 夜、家を抜け出し、片想いしている少女の家に行くと……


・「協会の夢」The Dream of the Consortium
 古い百貨店が買い取られ、そこに現れたのは、新たな百貨店。
 そこはあらゆるものが売られ、ディスプレイや休憩所さえも素晴らしい。
 人々は毎日のようにそこに惹きつけられる。


・「気球飛行、一八七〇年」Balloon Flight, 1870
 プロイセンに包囲され、気球でパリに向かい、レジスタンスの組織を目論む男。
 気球はどんどん空を登っていき……


・「パラダイス・パーク」Paradise Park
 大人気だった遊園地、パラダイス・パーク。
 そこは常に革新的なアトラクションを用意し、人々を魅了する。
 どんどん新たなものが現れ……


・「カスパー・ハウザーは語る」Kasper Hauser Speaks
 獣のような状態から、ちゃんとした人間になれたカスパー・ハウザー。
 彼がその心境を語る。


・「私たちの町の地下室の下」Beneath the Cellars of Our Town
 迷路のような地下道が広がる町。
 そこの人々の、地下道への想い。


ミルハウザーは短いのに、見逃しちゃまずいような気がして、読むのに時間がかかるんだよなぁ。


他の短篇は読んだことないんで、わからないんだけど、この短篇集に限って言うと、不確かな噂、箱庭的世界、そっくりなレプリカ、それらの断片が少しずつ集まって、最終的には本物の世界を凌駕、またはそれさえも内側に取り込んでしまう幻想、と言う作品が多い。
また、革新的なアイデアによって、それまでの常識が薄れてしまうノスタルジー、空飛ぶ絨毯や地下迷路など、見たことがないはずのものなのに、そこにノスタルジーを感じてしまう文体が、何とも魅力的であると同時に、そこには入ることができない疎外感、いらだたしさも感じる。


お気に入りは、「ある訪問」「夜の姉妹団」「新自動人形劇場」「協会の夢」「私たちの町の地下室の下」