INQUEST

検死審問―インクエスト (創元推理文庫)

検死審問―インクエスト (創元推理文庫)

大昔、創元や新潮社から出ていた幻の傑作。ついに新訳!

平和な村トーントンに住む女流作家ミセス・ベネット。彼女の70歳の誕生パーティに招かれた、少数の友人と親戚。そこで殺人事件が起きる。その遺体の検屍審問をするのが、これが初めての審問というリー・スローカム閣下。しかし、彼のやり方は、あまり関係がなさそうな証人を呼んだり、わざわざ審問を引き延ばしているように見えたり、と風変わり。はたして、事件は解決するのか?

幻とか、伝説の作品、なんて肩書きのつくものは、読んでみると幻のままでよかったのに……というものが少なくない。
さて、この作品。
やっぱ、ワイルドは好きだなぁ。
犯人と動機は途中でわかるし、ミステリ者からすれば、たぶん古臭いんだろうけど、個人的には大いに満足。普通の人々である証人たちの語り口、検死官と検死陪審員たちのダメな感じのやりとり、しかし、そこに事件の真相を解くためのピースが散りばめられている。
あっと驚く展開ではないけど、パズルとしては楽しめたし、メタな展開はあるし、ラストはワイルドらしいニヤリとする締め。
解説にもあるように、これは再読してもいいなぁ。
ちなみに、INQUESTとは、重要だと見なされる変死体を、検死官が陪審員を招集して死因を究明するシステムだとか。