QUEREMOS TANTO A GLENDA
- 作者: フリオコルタサル,Julio Cor´azar,野谷文昭
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/01/28
- メディア: 単行本
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収録作品
・「猫の視線」
芸術に触れ、変化する妻の内面を愛でる男。しかし、彼女と猫の間には入ることが出来ず……
三角関係で、妻を寝取られた夫もの、として読んでいいのかな。
それも、けっして仲を裂くことが出来ない、悲惨な奪われ方……
・「愛しのグレンダ」
女優グレンダのファンクラブ。彼らは、現存するフィルムを全て買い取り、編集し直し、最高の作品を再構成していく。そんな中、彼女が引退を表明し……
オタクの心理が理解できつつ、ある種の現実改変ものとしてけっこう恐ろしい短篇。
・「トリクイグモのいる話」
コテージにやってきた二人組。静寂を求めていたのだが、隣にやってきた女性たちの声に耳そばだて……
解説を読んで、再読して、やっと理解できました(読解力なさすぎ)
・「ノートへの書付」
地下鉄の入場者と出場者の数が合わない。それを調べる男が知った真実とは?
これが一番変な話かな。「南部高速道路」の地下鉄版で、『ネバーウェア』のようなもう一つの都市生活者もの。
・「ふたつの切り抜き」
パリ在住のアルゼンチン出身の彫刻家と記者。彼らは、母国での市民弾圧から遠く離れていて……
・「帰還のタンゴ」
資産家の夫と結婚するために、以前の恋人を法的に死んだことにしてしまった女。ある日、その昔の恋人が姿を見せる。
伝聞であったはずの物語が、いつしかその物語が主体になっていく様は、なかなか奇妙な読書感。
・「クローン」
亀裂が入り始めている音楽団。その中で、唯一のカップルがいて……
・「グラフティ」
違法の落書きを続ける男。ある日、自分の作品に答えるかのような落書きを見つける。その筆致から、女性ではないかと考えるが……
なんとなく、トルンカの『手』が頭に浮かんだ。
二人称の文体が、またもの悲しい。
・「自分に話す物語」
自分で物語を話す(妄想する?)男。ある日、知り合いの女性がその物語に出てきて……
・「メビウスの輪」
レイプされ、殺された女性。その意識は浮かび上がり……
とにかく「南部高速道路」があまりに面白かったんで、楽しみにしていた短篇集なんだけど、個人的にはちょっと違ったなぁ。
正直、何を語っているのか捕らえられなくて……。
お気に入りは、「愛しのグレンダ」、「ノートへの書付」、「グラフティ」あたり。