KISS ME AGAIN, STRANGER

鳥―デュ・モーリア傑作集 (創元推理文庫)

鳥―デュ・モーリア傑作集 (創元推理文庫)

『鳥』ダフネ・デュ・モーリア創元推理文庫206-02〉
デュ・モーリアの短篇集。
破局 (異色作家短篇集)』がイマイチはまらなかったので、試しに着手。

収録作品
・「恋人」 Kiss Me Again, Stranger
 自動車修理工の青年。
 映画館の受付嬢に一目惚れし、彼女を送っていることに。
 しかし、彼女は墓場で降りて……
 ツンデレ?(笑)
 下宿先の夫婦の態度がイマイチわかんないんだけど。


・「鳥」 The Birds
 ある日、鳥の大群が意志を統一させたかのように人間を襲ってきた。
 はたして、その理由は?
 ヒッチコックの『鳥』の原作。
 映画を見たのは小学生のときなんで、ほとんど覚えてないんけど、
 こんなに面白かったっけ?
 波かと思ったら……というシーンは、凄い怖い。


・「写真家」 The Little Photographer
 若く美しい公爵婦人。
 何をやっても退屈なのだが、海辺のリゾート地で若い写真家に出会う。
 彼との逢い引きを楽しむが……


・「モンテ・ヴェリタ」 Monte Verita
 山登りが共通の趣味の親友が結婚した。
 しかし、しばらくして、彼は憔悴した姿で病院に。
 彼の妻が、ある山に建てられた修道院に入ってしまい、2度と出てこないらしい。
 その修道院の正体は?


・「林檎の木」 The Apple Tree
 鬱陶しい妻が亡くなり、自由を楽しむ夫。
 しかし、庭の林檎の老木が、なんとなく彼女を思い出させる。
 そのうち、その存在に悩まされるようになり……
 偶然なのか、オカルトなのか、そのどちらにせよ、亡き妻の気配が、何とも意地悪な作品。
 相手の存在がそれだけ気になるということは、ある意味幽霊譚か。


・「番(つがい)」 The Old Man
 湖の掘っ立て小屋に住む夫婦。
 近寄りがたく、遠巻きに彼らを見ている男が語る、彼らの秘密とは?
 まさしく小説ならではの短篇。
 未読の人がいると悪いのであまり書けないけど、見事に脳内補完を騙されました。
 でも、この邦題は……


・「裂けた時間」 The Split Second
 裕福な未亡人。
 ちょっと散歩から帰ってくると、自分の屋敷に見知らぬ人々が。
 彼らは一体何者なのか? 
 警察を呼ぶのだが……
 オチは薄々予想がつくんだけど、最後まで楽しめました。


・「動機」 No Motive
 もうすぐ子供も生まれ、幸せな生活を送っている主婦。
 しかし、突然拳銃で自殺してしまう。
 理由が全くわからず、夫に依頼された探偵は彼女の過去を調べ始める。
 余計なものを省いて、かちっとピースがはまる感触が気持ちいい。

どれも粒ぞろいで、ハズレのない短篇集。
個人的には、『破局』よりも大いに楽しめた。
お気に入りは、「鳥」、「番」、「裂けた時間」、「動機」かな。