LANARK A LIFE IN 4 BOOKS

『ラナーク 四巻からなる伝記』アラスター・グレイ国書刊行会
アラスター・グレイの処女長篇。

常に曇り、陰鬱で退廃したアンサンクに、記憶をなくしてやってきた青年ラナーク。彼はそこで、体が鱗に覆われていく竜皮という奇病にかかってしまう。ある日、地面に現れた口に飲み込まれ、奇怪な病院に収容される。治療されたラナークは、そこで、自分の過去を語るお告げを聞くことになる……

上下二段、700ページもある大作なのに、あらすじを書こうとすると、こんな短く、わけのわからないものに。
物語は悪夢的な幻想世界を描いた3巻から始まり、ラナークの前世(?)のダンカン・ソーの1・2巻を挟んで、またラナークの4巻で物語は幕を閉じる。
内臓的で(口に飲み込まれるシーンは『ヴィデオドローム』を思い出してしまった)、悪夢のようなラナークの物語に対して、ダンカン・ソーのパートはグレイの自伝的なだけあって、かなり現実的。この両者が密接に絡み合って……ということはなく、むしろそれぞれ独立した小説。でも、その両方ともが展開が気になり、ページを繰る指が止まらない。また、時間も空間もあってないようなラナークの世界を、ダンカン・ソーの物語が挟むことで、ちょうどいい具合に気分転換できる。
じっくり読み込めば、この両者は対応しているように描き込まれているようだけど、もう一度読むにはちょっと体力が……
それよりも、長いエピローグで吹いたんで、それだけでも価値はあったかな。批評のパロディ、後付(っぽい)盗作リスト、メタで笑えます。
また、アラスター・グレイは絵も描ける人らしく、カバーや章扉も彼の手によるもの。カバーをはずした中もいかがわしくていいなぁ。
重力の虹』『百年の孤独』にならぶ20世紀最重要世界文学、ついに刊行!という謳い文句だけど、両方とも読んでないんで、それについては比較できませんが、今現在、リアルタイムに刊行を目にした本読みならば、読んでおいて損はないかと。