DIE THERAPIE

治療島

治療島

『治療島』セバスチャン・フィツェック〈柏書房

著名な精神科医ヴィクトルの愛娘ヨゼフィーネが突然姿を消した。彼女のその数ヶ月前から原因不明の病気に悩まされており、病院の待合室から何者かによって誘拐されたらしいのだが、手がかりは全くなかった。それから4年後、区切りをつけようと、別荘のある島でインタビュー記事を書いていると、そこにアンナと名乗る女性がやってくる。彼女は統合失調症だと言い、ヴィクトルに診てもらいたいのだ。アンナは作家で、作品のキャラクターが目の前に現れるという妄想を体験してるらしい。そして、彼女が語り始めたのは、まるでヨゼフィーネのような少女の物語だった……。アンナの正体は? 娘の行方は?

リーダビリティは最高。細かい章立てになっていて、その章のラストで新たな疑問や真相への邪魔が入り、結末まで一気読み。
実は、ヴィクトルもなぜか精神科で拘束されているという状態で、信用できない語り手が語る、信用できない語り手の物語。個人的には、『閉じた本 (海外文学セレクション)』に食感が似ているかな。ヴィクトルには探偵の友人がいて、嵐で島から出られない状況の中、彼との電話だけが外との細いつながりで、その存在が『閉じた本』に一味加えている。しかし、彼からの報告もまた、新たな不安の材料になり……
どこからどこまでが嘘か妄想なのかわからない展開が続き、ラストは見事にミステリで〆。
これは普通にオススメ。


独り言。
途中、預金が全て下ろされるんだけど、あれはそういうことか?