NUMBER 9 DREAM

ナンバー9ドリーム (新潮クレスト・ブックス)

ナンバー9ドリーム (新潮クレスト・ブックス)

『ナンバー9ドリーム』デイヴィッド・ミッチェル〈新潮社CREST BOOKS〉
a nanny mouseさんのオススメで着手

まだ見ぬ父を捜すため、屋久島から上京してきた詠爾。手がかりはないに等しい。様々な出会いや経験、双子の姉の死、心を病んだ母の語りの果てに、詠爾は父と会えるのか?

あらすじで書くと何とも薄っぺらいんだけど、一見普通小説に見えて、なかなか説明しづらいクレイジーな小説(だと思う)
全9章で、章の中で父親探しの現在と、非現実(SF的妄想、少年時代、夢、戦記、作中作ファンタジー、クライムノヴェルなど)が交互に語られる。また、全体の流れとして、いいことが起きると、ぶり返しがあって、そのアップダウンに気が休まらない。
少年が通過儀礼によって大人になる一種の冒険もの、として読める。だけど。
危機に陥ると、「向こうから人がぶつかってくる東京」のはずなのに、必ず手を差し伸べてくれる人がいる。しかも、その危機がかなり浮世離れしていて、さらに助けてくれる人も浮世離れしている上に都合よく退場する。詠爾以外のキャラクターは、ほとんど別の場所に行く用意が出来ているんだよね。もしかしたら、これは物語の全てが題名通り……?
ラストに近づくにつれ、現実と非現実の描写の間隔が短くなり、どちらなのかわからなくなってくる。
そして、ラスト。詠爾だけが東京を出た途端……。ホワイトアウトのような奈落感にはぞっとした。


舞台は東京なんだけど、違和感は全くなし。土地勘やアイテムなど、よくリサーチされている。
だからこそ、全体的にセットのように作り物臭いのは、狙ってのことなのか?


オススメ。