KILN PEOPLE

『キルン・ピープル』デイヴィッド・ブリン〈ハヤカワSF〉読了
ブリンの最新長篇。

魂の解析技術により、クローン作成が可能になった近未来のアメリカ。陶土の人形に魂をコピーし、ゴーレムと呼ばれる1日限定の複製を作る。ゴーレムは機能別に色分けされており、様々なことをやらせ、記憶を本人と統合することも出来る。ゴーレム作りの名人、モリスは、違法コピー調査を得意とする私立探偵。今回依頼されたのは、複製テクノロジーの最大手〈ユニバーサル・キルン〉の研究者ヨシル・マハラル博士を探すこと。1か月近く行方不明になっているらしい。時同じくして、複製暗黒社会の大物ワムメーカーからも仕事の依頼で呼び出される。モリスは高機能のグレー・ゴーレムを2体複製し仕事に送り出す。しかし、その2体は突然連絡を絶ち、さらに雑用のグリーンさえも仕事を放り出して消えてしまう。はたして、事件の真相は? そしてモリスが見ることになるものとは?

SFミステリなんだけど、魂自体の科学的説明の印象が薄いから個人的にはファンタジーのような感触を受けた。でも、テクノロジーによる自我の探求、3部以降の展開は現代SFか。あちこちに配置された伏線の収拾は、ミステリ的にはたぶんアウト(笑)。SF的にはOKだけどね。
未来社会の様子がかなり細かく描写されていて、それだけでもかなり楽しめた。本人も楽しんで書いてる感じだなぁ。ちなみに、ハヤカワ・ショボウはかなり大企業になっているようです(笑)。あとアンパンマンも現役。
分身してるんで、同時に、しかも全く違う行動をしている一人称。それぞれが様々な体験をし、さらに別段階になった自我、新たな地平も現れてきて、かなりてんこ盛りなんだけど、全てを絞りきるように1点に収束していく様はさすが。
固いイメージのブリン作品だけど、これはリーダビリティもよく、厚めの2冊でもさくさく読めた。