GALACTIC NORTH and DIAMOND DOGS, TURQUOISE DAYS

『火星の長城』アレステア・レナルズ〈ハヤカワSF1630〉読了
レヴェレーション・スペース未来史の短編集

収録作品
・「火星の長城」Great Wall of Mars
 連接脳派と保守派の戦いが続く火星。
 保守派の外交官クラバインは、和平交渉のため、彼らが籠もる長城に赴く。
 連接脳派のガリアナと心を通わせるが、同胞の謀略により、クラバインもろとも長城への攻撃が始まる。
 全滅は時間の問題。連接脳派の極秘計画とは?
・「氷河」Glacial
 居住可能な惑星を探し続ける連接脳派。
 クラバインとガリアナは、トンネルを掘る虫だけがいる極寒の惑星に降り立つ。
 そこには、1世紀前に到着したアメリカの基地が遺棄されており、
 隊員たちは、冷凍保存された一人を残して全員死亡。
 はたして、何が起きたのか?
・「エウロパのスパイ」A Spy in Europa
 対立するエウロパギルガメッシュ・イシス政府。
 スパイからの連絡で、エウロパに潜入するバーコビク。
 ある機密を渡したいというのだが……
・「ウェザー」Weather
 海賊に襲われた貨物船。
 運良く難を逃れ、船体主任のイニゴは海賊に囚われていた連接脳派の少女を助ける。
 徐々にうち解ける少女だが、連接脳派とそれ以外の種族ではまるで別物で、恋愛感情に生まれることはない。
 そんな中、エンジンの調子が悪くなる。しかも、海賊の仲間らしき影が。
 エンジンを直せるのは連接脳派だけだが、船長は彼らを信じておらず……
・「ダイヤモンドの犬」Diamond Dogs
 リチャードの前に、死んだと思っていた友人チャイルドが突然現れる。
 彼はメンバーを集め、惑星ゴルゴダに向かう。
 そこには異星文明のものと思われる巨大な塔が立っていた。
 塔の中には部屋があり、数学的問題を解くと上がれるのだが、間違うと残酷な罰が待っていた。
 はたして、頂上には何が?

「火星の長城」と「氷河」はS-Fマガジンで読んだときは、イマイチ面白く感じなかったんだけど、再読したらなかなかいけた。
クラバインとガリアナの物語の続きが読みたい、と思ったら長篇である模様。出るのを期待したい。
エウロパのスパイ」はアンソロジーで読んでるはずなんだけど、全く記憶になく、今回の中でもつまらない作品。
「ウェザー」は今までのシリーズにも出てきた謎の連接脳派エンジンの秘密が明かされる。
異種族間の恋愛ものはけっこう好きなんで、これもけっこう好み。ヴィンジの「錫の兵隊」をちょっと思い出した。
この短編集では、「ダイヤモンドの犬」が一番面白かったかな。これはホラーか? 『CUBE』みたいな感じ。ラストも嫌な余韻を残す。
ハッカーを雇った理由がイマイチわからないけど……


既刊の超厚文庫*1より、「ダイヤモンドの犬」くらいの長さの方が面白い気がする……


短編集2巻は12月に出る予定。