UNCLE PETROS AND GOLDBACH'S CONJECTURE

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『ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」』アポストロス・ドキアディス早川書房〉読了

家族から落伍者と呼ばれているペトロス伯父。しかし、わたしはそんな彼を慕っていた。ある日、実は彼が数学の天才で、留学までしていたのだが、「ゴールドバッハの予想」の証明に失敗し、そのまま帰国して隠遁者となったことを知る。ペトロスが語る、数学に取り付かれた狂気と挫折の物語とは?

ゴールドバッハの予想」とは「全ての偶数の合成数は、2個の素数の和で表すことができる」というもの。
ちなみに、現在も証明はされていません。


以前にも書いたけど、数学はさっぱりだけど、数学者の物語は非常に好き。
これは、そこに焦点を当てた小説なんだけど、奇行なら『[rakuten:book:10838401:title]』の方がよほど面白かったので、ちょっと残念。まぁ、数学者のエピソードは、ノンフィクションの方が凄いんだけど、そのままフィクションに載せかえると、逆に嘘っぽく見えちゃいそうだけどね。あとがきも、グランドマスターの奇行(面白かったけど)じゃなくて、数学者と他の難問について書いてくれればいいのに。
数学の証明は一番でなければ意味はないため、ペトロスは先を越されないように秘密主義、協力者も作らない(この辺はワイズと近いかも)。どんどん追い詰められる焦燥感と、ゲーデルの不完全性原理に叩きのめされ、糸がぷっつりと切れてしまう絶望感は、なんともつらい。
期待した分、ちょっと物足りないけど、歴史上の人物が数多く出てきたり、ラストは幻惑的でよかったかな。