REBUILT

サイボーグとして生きる

サイボーグとして生きる

『サイボーグとして生きる』マイケル・コロスト(ソフトバンク)読了
生まれつき難聴のマイクは、36歳の時、出張先で突然耳が聞こえなくなる。
補聴器の故障かと思いきや、完全に失聴してしまったのだ。
マイクは考えた末、人工内耳インプラントを埋め込み、サイボーグとして生きていくことを決意する。


著者自身の人工内耳生活のドキュメンタリー。
サイボーグ、と聞くと、個人的には『バイオニック・ジェミー』がまず頭に浮かぶ。
同じようにマイクは『600万ドルの男』をよく引き合いに出す(笑)
作中で語られているように、今現在一般的に実用化されている中では、人工内耳が一番サイボーグっぽい。
不謹慎だと怒られそうだけど、「耳」を起動し、バージョンアップさせていったり、CDや携帯電話を直接接続したり、埋め込んだ直後は葉っぱが「カサカサ」ではなく「チリンチリン」と聞こえてしまう様子は、かなりSF。
自分には全く聞くことのできない世界だし、難聴の方の生活も色々と興味深く読めた(俺もちょっと耳悪いんで)。


もっとポピュラーサイエンス風なのかと思っていたら、作者の人柄もあるのか、かなり日々の生活と、新たな耳を手に入れたことによる、新たな青春と発見が描かれている。
特に女性関係は生々しく、彼女が欲しくて、いつもオンラインデートで相手を物色(笑)
昔の恋人とベッドに入る際も、サウンドプロセッサーはどうしよう、とか。
はたして、恋人は見つかるのか?


ドラマ『ER』でも出てきたけど、手話派と口話派はなんで仲悪いの?
現在はかなり両者間の壁はなくなりつつあるようだけど、
両方を折衷で学ぶって言う選択肢はないの? 
二つの言語を同時に学ぶのは無理なのかな?
今では人工内耳の発展もあって、口話派が優勢で、数十年後には、手話派は少数になるだろうと言うのが作者の見解。
人工内耳自体はこの30年ほどで、凄まじい性能の発展を見せている。


マイクは、人工内耳を通して、デジタルで編集された音を聞いて、本当の音とは? と考える時期があるんだけど、自分の耳だって、「本当に正しい」音を聞いてるなんて証拠はどこにもないんだよね。
考えると、これって、けっこう恐くない?


注文つけるなら、もっと最初期の人工内耳開発秘話とかも読みたかったけど、なかなか面白かったです。