THE DEBT TO PLEASURE

最後の晩餐の作り方 (新潮文庫)

最後の晩餐の作り方 (新潮文庫)

『最後の晩餐の作り方』ジョン・ランチェスター新潮文庫〉読了
こんな題名だから、エッセイ(著名人の最後の食事みたいな)だと思ってスルーしてました。
帯と後ろのあらすじで、ネタバレしているのはどうかと……

大のフランス好きのイギリス人。芸術とグルメを愛し、博識多才。
彼が語る、人生と美食の数々。
しかし、どうやら、新婚夫婦を尾行しているらしく……
はたして、その理由と彼の正体は?

これは面白い。
この語り手が、1を説明するのに、10の蘊蓄を語り、その蘊蓄の蘊蓄をまた語り、改段落なしで、何頁も長広舌披露するものだから、最初に何を話していたのか忘れてしまう。
兄を愚兄と呼び、レシピと芸術論と、自慢だけの一人称で、何か訊いてもそのまま返さない、ひじょうにむかつくキャラクター。
最近読んでいたSFに比べれば、かなり薄目なんだけど、
こんな調子だから、なかなか読み進められませんでした。
しかし、その癪に障る物言いを飛ばすことなく、読んでいくと、ラストに近づくにつれ、正体が明らかになり、今までの語りの真実をはっと気づかされる。
オススメ。