THE DAY THEY STOLE THE MONA LISA

モナ・リザが盗まれた日 (中公文庫)

モナ・リザが盗まれた日 (中公文庫)

『モナ・リザが盗まれた日』セイモア・V・ライト〈中公文庫〉読了
100年近く前に起きたモナ・リザ盗難事件のノンフィクション。

1911年。ルーブル美術館からモナ・リザが盗まれる。
2年間、その姿は杳として知れず、世界は諦めかけていた。
しかし、イタリアで大工が美術商にモナ・リザを持ち込む。
鑑定の結果、それは真作と判明。
彼はどうやって、そしてなぜ、モナ・リザを盗んだのか?

100年前だから可能な犯罪で、現在では同じ手口では絶対無理。
とは言え、その手口、目的はまるで映画のよう。
実行犯は大工だけど、黒幕は美術品専門の詐欺師。
6枚の贋作を作り、盗まれた品だと言って、売ったらしい。
この事件は謎が多く、モナ・リザのガラスケース作製に携わり、前科もあった大工が真っ先に容疑者リストに上がるべきなのに、何故か彼は最後まで疑われず、
彼が描いていた日記も、紛失されてしまう。
どうやら、警察内部にも協力者がいたらしい。
また、贋作を買ったとされる6名も最後まで不明。
日記には、モーガンやロックフェラーの名前があったとも……


でも、この事件が本当に面白いのは、
盗まれたことと、大工が美術商に持ち込んだ以降のことは客観的事実だけど、
その間の話を証明する手だてがない。
大工の、現実と妄想がごっちゃになった、二転三転する証言と、
黒幕と称する男が記者に語り、死後に出版されたインタビューだけが、
犯罪計画やその手口を記している。
全て大工の妄想か、
黒幕と称する男のデタラメか、
もしかしたら、記者の創作かも知れない。
ユージュアル・サスペクツ [DVD]』のような、本当の話。


そして、この後も「モナ・リザは誰か?」と同じように語られていくのが、
「今のモナ・リザは本物なのか?」という疑問。
この時にすり替えられたのでは……