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破局 (異色作家短篇集)

破局 (異色作家短篇集)

破局ダフネ・デュ・モーリア早川書房 異色作家短編集10〉読了
幻の短篇集がついに復刊!

 収録作品
・「アリバイ」The Alibi
 平凡な毎日に飽き、理由のない殺人を計画した男。
 他に誰もいないアパートに暮らす母子に目を付け、
 画家として一室を借りることにしたのだが……
 アリバイのためのアリバイが、またアリバイが必要になり……という短篇。
 彼の心変わりがよく分かんないんだよなぁ。読み間違えてるのかな?
・「青いレンズ」The Blue Lenses
 目の手術をした女性。
 手術は成功し、包帯を取ったが……
 『トワイライトゾーン』の「みにくい顔」系の短篇。
 オチは読めるんだけど、包帯を取るまでのドキドキ感はたまらない。
・「美少年」Ganymede
 ベニスに旅行に来た学者。
 彼は既視感を覚え、自分はゼウスで、レストランの給仕をしている美少年はガニメデだと知る。
 彼のためにいろいろとしてやろうとするが……
 ある種の電波恋愛もの?
 ガニメデが自分の思い通りの少年じゃないと知ったときのガックリ度が哀れ。
・「皇女」The Archduchess
 とあるヨーロッパの小国。
 不思議な湧き水のお陰で、住人は全てが美しく、幸福に満ちていた。
 大公は不老で、その湧き水の秘密は彼だけが知っていたが、常に平和だった。
 しかし、そこに二人の異端者が生を受け、彼らが革命の火種をまき散らし始める……
 後世の歴史家による、架空の歴史叙述もの、という体裁。
 国が崩壊していく様も、滅びを避けられないと受け入れる大公たちも、胸に迫る。
・「荒れ野」The Lordly Ones
 両親とともに荒れ野に建つ一軒家に引っ越してきた、喋れない少年。
 泥棒に入られないように門の外に食べ物を置いておくと、
 不思議な一団がやってくる。
 どうやら家族らしく、食べ物を探して渡り歩いているようだ。
 すぐにぶつ自分の両親を捨て、少年は彼らに付いていくことにする。
 この中では一番変な話。
・「あおがい」The Limpet
 初老の女性が自分の人生を語る。
 彼女は常に愛する人たちのために尽くしてきたのに、
 まるで自分は報われていないという。
 読んでてかなりむかつきます。

お気に入りは、「アリバイ」「皇女」「荒れ野」


異色作家短編集の中では、SF寄りかミステリ寄りかだと、後者の作品集。
ミステリと言うより、サスペンス?
これまでの短篇集に比べると、あんまり変な話がなかったので、ちょっと残念。