THE UNIVERSAL BASEBALL ASSCIATION

ユニヴァーサル野球協会 (新潮文庫)

ユニヴァーサル野球協会 (新潮文庫)

『ユニヴァーサル野球協会』ロバート・クーヴァー新潮文庫〉読了
友人のオススメで着手。
野球用語に馴れないので、時間がかかってしまった。

会計士ヘンリーの趣味は、自作の野球ゲーム。
精緻で、複雑に設定されたそのゲームを毎晩プレイし、
それを何十年も続け、スコアブック、野球年間もつけ続けている。
そのシーズン、ルーキーのデイモンが完全試合を達成する。
活気づく、ユニヴァーサル野球協会。
しかし、ある事件が野球協会とヘンリーの人生を狂わせ始める……

おそらく、オタクなら、いや男子なら、○○と○○を戦わせてどっちが強い、
という妄想遊びをしたことでしょう。
実際、自分も、怪獣の人形に詳細な設定を考えてたものです。
それが、野球オタクなら、なおさらヘンリーのことはよくわかるはず。


野球が全ての中心になっているユニヴァーサル野球協会という、もう一つの世界。
選手たちの人生、事件、政治さえも設定されている。
ヘンリーのテーブルの上だけだったその世界は、彼を浸食し始める。
ユニヴァーサル野球協会の選手は、自分たちを記録する神がいるような気がしているが、
その神は、子供のようにゲームの世界に没入し、大人のように世界に酔い続けている。
二つの世界の垣根は曖昧で、主体がどちらなのかわからなくなっている、夢幻的な物語。


同僚とゲームをするシーンが涙。
オタクにはオタクの厳密なルールがあるのに、どうしてわかってくれないかなぁ!
そしてビールのシーン。
今から二十数年前、初めて色を塗った装甲車のプラモデル。
その砲塔を弟に折られた光景がフラッシュバックしました。許すまじ!
ラスト直前、ヘンリーがやったことにより、世界は崩壊し、また再建される……
彼は向こう側に行ってしまうのか?


オタクなら、ヘンリーの姿に自分を重ねることは容易なはず。
未読の方はオススメ。