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勇猛なるジャレグ―暗殺者ヴラド・タルトシュ (ハヤカワ文庫FT)

勇猛なるジャレグ―暗殺者ヴラド・タルトシュ (ハヤカワ文庫FT)

『勇猛なるジャレグ』スティーヴン・ブルースト〈ハヤカワFT〉読了
こ、これは……!

非常に長命なドラゲイラ族が支配している帝国。
人間は東方人として差別されている。
父親が金で爵位を買ったため、東方人でありながら、ドラゲイラ族ジャレグ家の準男爵ヴラドは、
帝都アドリランカの暗黒街の一画を取り仕切ると同時に、呪術と剣術に優れた暗殺者としても有名だった。
ある日、ジャレグ家のナンバー2、"デーモン"から依頼が来る。
〈評議会〉の一員、メラーが運営資金を盗んで逃げたため、暗殺して欲しいというもの。
彼は、中立地帯であるドラゴン家の〈黒の城〉の客として招かれていた。
ヴラドは、城主マローランと友人だが、
〈黒の城〉の中では、理由に関わらず、殺しはもちろん、魔法も脅すのも許されていなかった。
しかも、自らの客が殺されたとなれば、マローランはジャレグ家と戦争を起こすのも辞さなかった。
一方で、デーモンは、〈評議会〉から簡単に金が奪えるなどと思われてはいけないと、
何がなんでもメラーを殺そうとしている。
ヴラドは、戦争を引き起こさず、かつ、メラーを始末することが出来るのだろうか?

こ、これは、最近読んだ中じゃ大当たり!
個人的異世界ファンタジー嗜好に、かなりの直球。
中世風でなく、ファンタジー世界における現代、みたいな舞台設定が、もぉ堪らない!
全く説明されない固有名詞や事件の名前が、この世界にのめり込むのに効果的で、
ハードボイルドタッチのストーリーとよくあっている。
また、死者は3日以内なら生き返らせられるとか、
意思を持っているかのような強力な魔法武器など、
ファンタジーなアイテムも、うまく組み込まれているんだよなぁ。


あちらを立てればこちらが立たず、と言う状況を、ヴラドが仲間と共に、どうやって解決するのか?
魔法によるペテン、という感じなんだけど、その魔法の使い方が、科学っぽいところも、また好み。
魔法も万能ではなく、論理的に暗殺計画に組み込まれていくのは、
ちょっとダーシー卿シリーズに近いものがあるかも。


皮肉っぽいヴラドと、口の悪い使い魔ロイオシュもさることながら、
数多く出てくる仲間達が魅力的。
個人的には、クレイガーとアリーラとカイラがお気に入り。
作中では言及されていない、マローランとの出会いや、
元暗殺者の妻カウティとの馴れ初めとかも是非読みたい。


魔術探偵スラクサス』の続きを待って幾星霜……(しつこい)
取り敢えずは諦めて、こちらは3巻までは出ることが決まっているので、
シリーズを楽しむことにします。
2巻は4月発売。

他の方の感想
http://d.hatena.ne.jp/walkeri/20060210



オススメ。