TRADING IN DANGER

栄光への飛翔 (ハヤカワ文庫SF)

栄光への飛翔 (ハヤカワ文庫SF)

『栄光への飛翔』エリザベス・ムーン〈ハヤカワSF〉読了


去年、最も印象深った一冊『くらやみの速さはどれくらい (海外SFノヴェルズ)』のエリザベス・ムーンの作品。
他の作品はどんなものなのかと、新刊買い。

優秀な士官候補生カイ・ヴァッタ。
しかし、親切心から下級生の悩みを解決しようとしたがために大騒動になり、退学処分。
実家は宇宙でも名高いヴァッタ航宙。
父はカイを廃棄処分の船の船長に命じ、スクラップにするために運ばせる。
途中、一儲けしようと、農業機械の買い付けに向かうが、そこで戦争に巻き込まれてしまう。
傭兵会社から民間人を預かってくれと頼まれ、引き受けるが……

〈若き女船長カイの挑戦〉シリーズの第1巻。
『くらやみの速さはどれくらい』をイメージしてると全く違う。
あとがきによると、スペースオペラ系の作品の方がメインで、『くらやみの速さはどれくらい (海外SFノヴェルズ)』の方が例外だそうだ。


女性が主人公のミリタリーSFと聞いていたから、オナー・ハリントン*1みたいなのかと思ったら、
民間船の船長で、そこで優秀な士官になるはずだった才能を生かし、危機を乗り越えていく、という感じ。
知恵と機転の主人公としては、マイルズ・ヴォルコシガン*2の魅力には及ばないけれど、
親切が常に裏目に出て、事件を呼び込んでしまい、
退学を引きずり、学校の恋人を想い出し、本当は激情家なのを押さえ込んで冷静に事態に対処していく姿は、それなりに牽引力があるかな。


ただ、自分の船を持ちたいっていう話が唐突な気がした。
持ってどうするってのも出てこないし、いまだ軍人の夢は捨て切れてないし、
悩むっていうのは別に、イマイチ足元が定まらない感じなんだよなぁ。
そういう現代の若者っぽいキャラクター造型?
それから、マックロバートの真意、傭兵会社の誘い、戦争、宙賊、のネタが、なんか尻切れトンボ。
別に説明がなくても最後までリーダビリティは衰えないんだけどね。次以降で説明?
特に、マックロバートは、てっきりマイルズみたいな展開なのかと思ったら、全く説明なし。う〜ん。


そんなわけで、けっこう展開は気になるし、さくさくっと読めるんだけど、読後に色々と疑問が噴出する作品。
作中に出てくる、通信会社をメインにした話を書いてくれんかな。