BRIGHT SEGMENT and other stories

輝く断片 (奇想コレクション)

輝く断片 (奇想コレクション)

『輝く断片』シオドア・スタージョン河出書房新社 奇想コレクション〉読了


奇想コレクションの新刊! スタージョン第2弾!
『不思議なひと触れ』が様々なジャンルの作品だったのに対して、
こちらはミステリ(というか非SF)作品の短篇集。
今回の表紙は、今迄で一番好きかも。


 収録作品
・『取り替え子』Brat
 ショーティとマイクル若いカップル。 
 ショーティの伯母は、遺産を残す条件として、子供をちゃんと育てられる人間と条件を付けてきた。
 しかし二人に子供はいない。
 ある日、川で拾った赤ん坊は、口の悪い取り替え子だった!
 彼は二人に協力してやる、と叔母さんの屋敷に向かう。
・『ミドリザルとの情事』Affair with a Green Monkey
 アルマとフリッツの夫婦は暴漢に襲われていた男を助ける。
 フリッツは彼をゲイと決めつけ、男らしく振る舞う方法を教えるが……
 これ、イマイチ理解できない。
 唐突だし、ラストがエロネタなのは判るんだけど……
・『旅する巌』The Traveling Crag
 エージェントのが手に入れたクリスの小説は、あらゆる者が感動する傑作だった。
 第2作も書いてもらおうとするが、彼は小説からは想像もできないような人格破綻者。
 ある日、性格が豹変してしまった人間を捜している女性と出会う。
 彼女の話によると……
 これはあんまり面白くなかった。
・『君微笑めば』When You're Smiling
 傲慢な有能な記者。
 彼は無数の未解決事件の中から、共通点を発見する。
 ある日、子供の友人ヘンリーと出会う。
 彼はいつもにこにこしてて、あまり頭の巡りがよくない。
 彼なら大丈夫と、自分の発見した事実を語り出す。
 これも実は、イマイチ飲み込めてない。
 本当の能力者なのか、それともサイコさんなのか?
・『ニュースの時間です』And Now the News...
 ニュースが大好きな男。
 我慢できなくなった妻は、テレビやラジオの真空管を外してしまう。
 家でニュースが聞けなくなってしまい、彼は家を飛び出してしまう。
 SFマガジンで読んだときもぶっ飛んだけど、再読してもやはり凄い。
 予想の斜め向こうに飛んでいく展開は、是非読んで欲しい。
 ちなみに、ハインラインがネタを提供して書いたとか。
・『マエストロを殺せ』Die, Maestro, Die!
 バンドのMC担当のフルーク。
 彼は、万能で性格もいいリーダーのラッチの存在がどうしても許せなくなり、
 策を巡らして殺し、死体を沈めてしまう。
 残されたメンバーは、彼がいつ帰ってきてもいいように演奏を続けるが、
 その音楽の中にはいまだにラッチが生き続けており、
 なんとかしてラッチを本当に殺そうと考える。
 ラッチを殺そうと、狂気に陥るフルーク。
 その底流には常に音楽が流れている……
 『ぶわん、ばっ!』と同じように、曲が聞こえてきそうな短篇。
・『ルウェリンの犯罪』A Crime for Llewellyn
 悪いことはしたことはなく、考えたこともない男、ルウェリン。
 彼は19年間、アイヴィと言う女性と暮らしている。
 ある日、彼女から打ち明けられた秘密により、彼の中で何かが壊れはじめる……
 状況的には孤独でないのに、何か一人きりという感覚を覚える作品
・『輝く断片』Bright Segment
 雨の中、血まみれで倒れている女を見つけた男。
 家に連れ帰り、看病する。
 友達も生きがいもなかった彼だが、
 彼女の世話をすることにより、人生の目標を感じるのだが……
 『孤独の円盤』『不思議なひと触れ』と同じものを求めながら、
 まるで違う方向に進んでいってしまう、胸に詰まるような悲しい物語。

 
後半の4作品は、本当に面白かった。
個人的には、特に『ニュースの時間です』と『輝く断片』がオススメ。
スタージョンは、仲間がいないのは寂しい、という感覚を描くのが本当に上手いと思う。


次の奇想コレクションは9月予定とか。
このペースだと、順調に出ても、『たんぽぽ娘』は再来年か……