2005年5月号

S-Fマガジン 2005年 05月号

S-Fマガジン 2005年 05月号

今月の特集は『ニュー・ウィアード・エイジ』
イギリスの現在の、ジャンル・ミックス的な、SF・ファンタジーの活況の特集。


翻訳物は5作
『エメラルド色の習作』……ニール・ゲイマン
 血相を変えて、レストレイド警部が、ロンドン唯一の諮問探偵の元にやってくる。
 彼らが現場に行くと、
 そこには王族の一員が、緑の血を流して殺されていた。
 これは、"旧きものども"の支配を逃れ、
 人間の世界を取り戻そうとする反動勢力の仕業と推理するが……
 ホームズ+クトゥルー短篇。
 ゲイマンらしいお遊びが散りばめられていて、かなり楽しめた。
 千の仔を孕む森の黒山羊とかエジプトの暗黒王、ていう単語に反応してしまう人は必読。
 ラストでもニヤリ。
『樅の木食堂で朝食を』……ジョン・コートネイ・グリムウッド
 精神を違う肉体にダウロード、コピーする殺し屋の話。
 なんか、よくわかりませんでした。
 解説でもあったけど、『オルタード・カーボン』とちょっと被る。
『暗黒の晩餐会』……リズ・ウィリアムズ
 異星人に支配されたパリ(全世界?)
 世界は闇に閉ざされ、光や温かさはなくなっていた。
 その異星人たちへのデザートを作る、才能ある若きパティシエ。
 彼は、レジスタンスから、あるものを渡される。それは?
 かなり短く、世界設定もよくわからないんだけど、
 個人的にはかなりツボ。電車で読んでたら、駅を乗り過ごした……
 闇や影を調理し、デザートを作る。
 何をしているのか全く説明はないんだけど、ひじょうに夢幻的。
 SFとファンタジーという、明確な区分けのない、
 ニュー・ウィアードという意味が、一番理解できた。
『帰休兵』……ニール・アッシャー
 チールがギャングの恋人から宝石を奪って追われていると、
 海辺に、戦地から離れ休みに入っている機械化兵が。
 彼は、なぜか彼女を助けてくれて……
 これも、それほどかなぁ。
『ウェブ・ライダー』……ジェイジー・カー
 浅倉久志セレクション。
 宇宙空間内を瞬時に移動できる、特殊能力者ウェブ・ライダー。
 彼らは、星から星へ、ある星ではありふれていても、他の星では貴重な物資を運んでいるのだ。
 彼女もそんなウェブ・ライダーの一人。
 有名人でもあるウェブ・ライダーに近づきたがる人間は多い。
 仕事のあと、その星でのしばしの休暇の共に、マッチョの男を選んだが、
 そこにも、グルービーの少年が現れて……
 なんかに似てると思ったら、昔のアン・マキャフリーの作品に雰囲気が似てるのか。


「SF SCANER」は特集に合わせて、イギリス作品。
イアン・R・マクラウド『The Light Ages』
ティーヴ・コケイン『Wanderers and Islanders』
トリシア・サリヴァン『Maul』
が読んでみたい。


「SF BOOK SCENE」は英訳されている外国作品


「MAGAGINE REVIEW」は〈アシモフ〉誌
ウィリアム・バートン『Though I Sang In My Chain Like the Sea』
スーザン・パルウィック『The Fate of Mice』が面白そう。


2月17日にF・M・バズビィが亡くなったそうだ。
享年84歳。
恥ずかしながら読んだことないんだけど、
『ここはウィネトカならきみはジュディ』は非常に好きな題名。
ご冥福をお祈りします。