DISTRESS

万物理論 (創元SF文庫)

万物理論 (創元SF文庫)

万物理論グレッグ・イーガン〈創元SF文庫〉読了


2055年。全ての自然法則を包みこむ万物理論。それが完成し、南太平洋の人工島で発表されようとしていた。
映像ジャーナリストのアンドルーは、世界で蔓延しつつある奇病の番組を蹴って、
3人の候補者の内、最も若い20代の女性ノーベル賞受賞者ヴァイオレット・モサラを取材することに。
しかし、島に着くなり謎の汎(男でも女でもない第三の性)にモサラが狙われていると警告され、
学会の周りには万物理論を敵視するカルト集団が出没していた。
万物理論が完成したとき、何が起きるのか!?


いくつかの短篇を除いて、イーガンはどうも苦手だったんだけど、
2004年度SF1位なんで、取り敢えず手に取ってみる。


……ふぅ。
満足。


第1部は、
嘘のつけない真実の精神を得るために自ら脳の一部を切除して自閉症になる人々。
体を一つの生態系のように完全に改造して、不老不死になる富豪。
死にたての人間を一時的に蘇生させ、殺人犯について語らせる技術。
など、未来のテクノロジーとそこから生まれる倫理観が語られる。
個人的には、ここだけで十分読み応えがあって面白かった。
数冊描けそうなネタが一部だけで詰め込まれている。


2部は万物理論について。
ここは一気にペースダウン。
この小説のタネを説明してるんだけど、まるで理解できず。


でも、3部からは一気に読了!
万物理論が完成することによって何が起きるのか? 
それが解かれようとしていく消失点に向かって、
今までに描かれてきた事柄が一気にそこに向かって収縮していく様はゾクゾクする。
ステートレスのクライマックスは最高。


原題の『DISTRESS』は奇病の名前。
これが最初にちょろっと出るだけで、ずーっと言及されないんだけど……
これ以上は言えねぇ!


久々に「SFを読んだーっ!」て言う満足感が得られる。
オススメ。