CHANG AND ENG

運命の双子 (海外シリーズ)

運命の双子 (海外シリーズ)

2〜3年前に買ったんだけど、
ビッグ・フィッシュ』感動記念!ということで着手。


『運命の双子』ダリン・ストラウス〈角川書店〉読了


結合双生児のことを俗にシャム双生児と呼ぶけれども、
そもそもは、エン&チャンという、双子が有名になったことがきっかけ。
歴史の中では、結合双生児の道化師などが度々出て来るけど、
おそらく、マスメディアに乗った史上初の結合双生児が彼ら。
それ故に、シャム(タイ)出身のため、それが代名詞となったのだ。


これは、ドキュメンタリーではなく、エン&チャンを題材にした小説。
生没年、出身、結婚、アメリカに渡った理由などの大筋は史実通りだけど、
あとはほとんど創作。


胸の辺りで筋肉質の組織でつながって生まれたエンとチャン。
その姿から、彼らはシャム国王に召し抱えられ、
ついでアメリカに渡って、見せ物(サイドショー)のスターとなる。
しかし、ほとんど金はもらえず、
18歳の時に逃げ出し、そのあとは自分たちでマネージメントして、財を築く。
そして、二人の姉妹と同時に結婚。
ついに彼らが夢見てきた幸せを手にしたと思われたが……


エンの一人称で描かれている。
生まれたときから常に弟とつながったままで、
誰よりも彼を愛し、憎悪してきた人生。
エン自身はできることなら分離したかったのだが、
体の弱いチャンにはそれは考えられなかった。
妻たちのと奇妙な生活。
大勢の子どもたち。
南北戦争
全てが人と人との関係。しかし、彼らは決して別れることはできなかったのだ。
ラスト間際、人生最初で最後の兄弟喧嘩は痛切。


現実のエンとチャンもやはり姉妹と結婚して、
二つの家を建てて、3日半ずつ、お互いの家で妻と暮らしたそうだ。
実際の二人はかなり仲が悪くなったらしく、後年、チャンの酒癖が悪くなるのは小説どおり。
それでも離れることができない。
はたして二人がどういう心で人生を送ってきたのかはわからない。
できることなら、幸せであって欲しいんだけど、
他の人間には想像できない人生だからなぁ。
でも、見世物と言う使役される存在から、
結婚して、農場を持って、奴隷さえも雇う主人になったというのは、稀有な存在。 
そういう意味では幸せだったのかな。


ちなみに、途中ちょっと出てくるバーナムは有名な興行師。
今言われるジャンボという意味は、
彼が見せ物で使っていたジャンボという名の巨大な象が元。
いかにも奇形児を見せ物にして食い物にしていたようなイメージだけど、
彼らにはちゃんと家が建てられるくらいの報酬を与えていたとか。


この手の話に興味が出た方は、
名著『フリークス―秘められた自己の神話とイメージレスリー・フィードラー(青土社)がオススメ。
図説 奇形全書マルタン・マネスティエ(原書房)は図版が多いんだけど、
サイドショー寄りで、ちょっと内容が薄いかなぁ
図版目的なら、洋書を探すのが吉。