今月の特集は『異色作家短篇集・別巻』
翻訳作品が多くて読み応えアリ。


・『ニュースの時間です』……シオドア・スタージョン
家庭人としても、社会人としても模範的な男。
しかし、彼は唯一、ニュースを熱狂的に求める癖があり、
新聞は隅から隅まで読み、ラジオのニュース番組は全て聞く。
それをやっている最中は声をかけてはいけないのだ。
もう我慢できなくなった妻は、家中のラジオの真空管を抜いてしまった。
何も聞こえなくなっていて慌てる夫。
彼はそのまま家を出てしまい……
これは凄い。ぶっ飛んでる。
この前半のあらすじである程度の展開が読めるかも知れないけど、
予想の斜めというか、もう四次元殺法(笑)。ラストも全く想像の外。
さすがスタージョン、と言う感じだけど、
元ネタは困ってる彼に、ハインラインが提供したくれたものとか。
でも、凄い。一読オススメ。
・『床屋の予約』……チャールズ・ボーモント
最も成功した芸能人、シェッキーが絶望した顔でエージェントを呼んだ。
彼は、床屋を予約して欲しいという。
それは寂れた町にある、1ドル散髪屋だった。
店主の老人に予約を頼むと、いっぱいだと答える。
いくら金を出すと言っても首を振らない。
世界で知らぬ者のいないのに!
予約を入れられなかったことを聞いたシェッキーは……
わけわからなくて、これも好き。
解説に書いてあったんだけど、ボーモントは38で亡くなっていて、
急激に老いる病気にかかって、死んだときは100歳の老人のようだったとか。
生き方が『トワイライトゾーン』みたい。
・『グーバーども』……アヴラム・デイヴィッドスン
幼い頃、意地悪な祖父に引き取られた主人公。
逆らうたびに、グーバーに連れていってもらうぞ、と言う。
グーバーがなんだかわからなかったが、ひどく怯える。
しかし、もう命令を聞きたくないと、
覚悟を決めてグーバーとやらがいるらしい場所に行き、彼らを呼ぶと……
けっこう怖い。
またまた『地下室の魔物』を思い出した。
・『王侯の死』……フリッツ・ライバー
学生時代の仲間の中心的存在、ブルサール。
ふと、彼に関する事実に気づき……
個人的には、これはあんまりだったかな。
・『ザ・ジョー・ショウ』……テリー・ビッスン
ヴィクトリアがCDをかけながら風呂に入っていると、突然歌をとちった。
何事かと出ると、テレビが勝手につき、トークショーの司会のような男が映っている。
彼が言うには、超巨大な地球外知性体の創造物で、
主人がクリントン大統領と歴史的会談をしている間、回線のようなものを保持する役目らしい。
それには、性的興奮で意識を高めなければいけないとか。
その相手として彼女が選ばれたのだ。
最初は信じない彼女だったが、徐々に大胆になっていき……
これは笑えました。
初出は『PLAYBOY』なので、ちとエロ系(笑)
面白かったんだけど、異色と言うよりむしろSFのような気が……


翻訳家による異色作家対談や、巻末の異色作家短篇の系譜も良くて、久々にお買い得感のある号。
アンナ・カヴァンは違う意味で異色、が笑った。
河出と晶文社はそれぞれスタージョンの第2段が決定だとか。
奇想コレクションにはアヴラム・デイヴィッドスンも内定の模様。
ベスターが出て、あと誰が入るんだろ?
プリーストの短篇集とか出してくれると嬉しいかな。
マティスンとかどうなんだろ? と思ったけど、結構文庫になってるからな。
エムシュウィラーとかまとめて読みたいね。


香山リカのエッセイは皇太子発言の話。 
なかなか面白かった。そんでもって、精神科医の文章だなぁ、と初めて実感。