今月の特集は2003年度英米SF受賞作特集。


2003年受賞作、と言うことは2002年度の作品から選ばれるので、2002年の作品概況が載ってた。
文学刑事サーズデイ・ネクスト』の2巻は、ディケンズカフカ不思議の国のアリスの世界が舞台とか。
『ワイルド・カード』は久々に16巻が発刊。頼むから出して。
ニール・ゲイマンの『American God's』は出して欲しいなぁ。
ダグラス・アダムスの未完の遺作にインタビューなどを所収した『疑いの鮭』なんてのも出たそうで。


翻訳作品は4本。
・『ワイルドガール』……アーシュラ・K・ル=グィン
ローカス賞アシモフ誌読者賞ノヴェレット部門受賞
その世界は、人間は3つの階級に別れていた。
支配者層の冠族。職人層の根族。奴隷層の土族。
冠族の男は土族の女と、女は根族の男と結婚しなければならず、
土族の男は根族の女と結婚しなければならないという複雑な階級社会をもっていた。
冠族のベラは兄と同じように美しい妻を娶るため、
仲間と共に土族の集落を襲い、何人かの少女をさらってくる。
それは正義でも悪でもなく、自然の理なのだ。
少女の冠族の町での生活が始まる。
ル=グィンの複雑な人類学的設定はまだまだ健在。
こちらの世界と全く違う文化を描くのは本当に上手い。
ただ、キャラクターの名前がなかなか覚えられず、終わり間近になってようやく。
・『人は空から降ってきた』……ジェフリー・A・ランディス
ヒューゴー賞ショート・ストーリー部門受賞
未来。
地球上で死刑制度がなくなり、重犯罪者は片道の宇宙船で火星に流刑になった。
そこで伝わる、数少ない最初の火星人に関する伝説。
ガジェットだけだと、よくあるSFだけど、
火星生活の激しさと厳しさ描かれていたと思う。
特にラストの星で生き延びていく力強さが強烈。
・『ロージー』……キャロル・エムシュウィラー
ネビュラ賞ショート・ストーリー部門受賞
愛する妻子と犬を失い、山の中で世捨て人のような生活をしている男。
そこに、傷を負った言葉を喋る巨大な爬虫類のような生物がやって来る。
最初は恐る恐る接していたが、徐々にうち解けていく二人。
しかし、その生物は軍によって作られたものらしく、追っ手が現れた……
確か、去年も1作訳されたと思うけど、エムシュウィラーは元気です。
正直言って、もう亡くなられたと思ってました。失礼しました。
・『創造』……ジェフリイ・フォード
世界幻想文学大賞ショート・ストーリー部門受賞
ぼくは、森の中で木を人の形に並べて、人を創造した。
それが本当に動き始めて……
お父さんとの関係に、胸に熱いものを感じる作品。
かなりいい。
日本じゃまだあまり訳されていないけど、以前に載った『ファンタジイ作家のアシスタント』も面白かった。


今回の『人間廃業宣言』はナウシカの話。
アメリカではナウシカがあまり受けなかった、と言う話は聞いたことはあったんだけど、
その理由を初めて知った。
ナウシカは火(=文明)と水(=自然)の話で、
アジアの人間は水を尊重すべし、て考えは根元的に受け入れられると思うけど、
アメリカ人は、確かに腐海は水を浄化しているかも知れないけど、その為に人間は滅びつつあり、
それを焼き尽くすのが何故いけない、とどうしても理解できないそうだ。
象徴的なことに、同年に公開された『ファイアー&アイス』というファンタジーアニメでは、火が正義で、氷は敵なのだ。
まー、今も全く変わってないからね。
どうりで京都議定書も脱けちゃうわけだ。


年末に書き忘れたんだけど、
今月号に紹介されていたので、『スカイ・キャプテン』を。
カ、カッコイイ〜