今月の『SFマガジン』の特集は「リアリティ・クライシスの行方」。


SFテーマの一つ、「現実の世界とは何か?」の現代の作品の特集。
……と言う割りには、ポスト・サイバーパンク系が多い気もするけど。
まー、海外の作品が沢山載ってたので満足。


一番気に入ったのは、チャールズ・ストロスの『ロブスター』。
21世紀の『ニューロマンサー』って感じ。
ニューロマンサー』ではコンピュータを使うこと自体が特別な技術だったけど、
こちらでは、パソコンは当たり前で、それで新しいアイデアを考える、ということが技能。
主人公は所有するのもされることも嫌い、新しいアイデアを思いつくと、それを実現できそうな人間にただ渡す、ということを生業としている。
すべての知識は共有すべき、というのは最初期のハッカーに通じるのかな。
そのため、毎日、最新情報をネットの中から落とし続けている。
巨大なニュースサイトを読んでいるような感覚になる短篇。それを意識して訳しているんだろうけど、10年後も読めるかというと、きついかも。
祭り状態とか、今だと笑って理解できるけど、ネットの世界は高速だからね。あと3年保つか……
全9話の連作シリーズらしいんだけど、訳されたら、これは新刊で買うかな。


あとは、パトリック・オリアリーの『いまは眠りたいだけ』。
何が起きているのかよく分からないけど、ひんやりした感じがけっこうお気に入り。


ブルース・スターリングの『楽園では』。
翻訳機能が付いた携帯でのみの会話をするアメリカ人とイラン人の恋の物語。
スターリングらしい短篇。


グレッグ・イーガン『決断者』。
金を持っていそうな男から奪った、目に装着するインターフェイスは、全ての意味が見えるプログラムだった……。
この作品が、一番、特集に直球の作品な気がする。
ありとあらゆるも映像や音から思考を見ることができ、
そして自分の思考を決定しているものはどこにあり、なんなのか、それを分かつものはなんなのか、という短篇。


ニール・スティーヴンスンの『「太平洋沿岸の〈部族〉」第三巻(最終巻)よりの抜粋』
『ダイヤモンド・エイジ』の外伝。
本編読んでないので、あまり感慨なし。早く文庫に落ちんかな。