暗号化
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『暗号化』スティーヴン・レビー(紀伊国屋書店)読了。
「これは、暗号にかけた男たちの、長く孤独な闘いの物語である……」♪風の中のす〜ばる〜、て始まるわけよ(注:始まりません)
通信データの暗号化を巡る民間の研究者と政府との30年に及ぶ闘いの物語。
現在、ネットで気楽に買い物ができるのもこの個人情報の暗号化のおかげ。
でも、1970年初頭くらいまで、驚くべきことに民間で知ることのできた暗号と言えばエニグマがいいところだったのだ。
全ての暗号は通称トリプルフェンスの向こう、つまり、この本の敵役NSA(国家安全保障局)が握っていたのだ。
巻頭に主な登場人物がいるんだけど、主人公の一人、公開鍵暗号の発案者ホイット・ディフィーの紹介が、
「さすらいの暗号研究家」
ゴフッ! 初っぱなからかなり強烈なボディブロー(笑)
元々数学者だった彼は、数学の真理(暗号は数学である)を掌握しているようなNSAに反感を持ち、そして将来ネットワーク社会が来ると予測したことから、暗号の世界に踏みいることになる。学生時代は共産主義者とつきあっていたり、ヒッピーのような格好をしていたり、と俺ビジョンではキャストはロバート・レッドフォード(笑)
彼の公開鍵暗号と平行して、非公開鍵暗号も開発される。
その名はコードネーム・ルシファー。ゴフッ! 再び激しい一撃。
その後もRSAアルゴリズムの開発、PGPの作成者で元反核闘士のフィル・ジマーマン(こいつがまたイカス)など魅力的なエピソードが続く。
基本的に暗号の世界は狭くて、主要キャラはずっと関係しながら登場し、最初の方にちょろっと出てきた人物が10年後くらいにまた出てきたりもする。
前半は暗号の開発そのものにNSAがいちゃもんをつけて来るんだけど、後半はコンピュータが広がり始め、その暗号プログラムを組み込んだパソコンの販売、輸出を巡る政府との闘いになってくる。
この後半の主人公とも言えるのが、天才ネゴシエイターにして天才アジテーター、スーパー営業マンのジム・ビゾス。
彼の他社とのやりとりや政府との駆け引きがかなりしびれる。
そして、ついにインターネットが世界を結び、長かった暗号戦争の結末は……という概要。
で、エピローグで明かされる意外な事実。これも泣けるんだよ。
今年一番はまったかも。危うく電車を乗り過ごすところだった。
下手な小説よりも、いや、並の小説よりもよっぽど興味深くスリリングで面白い。
ニール・スティーヴンスンの『クリプトノミコン』読もうと思ってたけど、もういいや(笑)
数式や文字の羅列は全く出てこないので、文系人間でも100%のめりこめる。
なにより、『スニーカーズ』大好き人間は必読!
『暗号解読』はどーすっかな。