放送禁止歌

ケッチャムマラソンがハードだったので、一休みで軽く読めそうな本ということで、
放送禁止歌森達也解放出版社)読了。
しかし、ある意味ケッチャムなんぞよりも重かった。


これは2年前にフジテレビでやった同名の番組の単行本化。
自主規制するマスコミの意見のなさと理由のなさを見てると哀しくなるね。
本当にくだらない。


カンヌ国際広告祭の研究発表会に行ったときに聞いたことで、
アメリカのビールのCMと言うのはビールを飲んでいるシーンを出してはいけないと言う規制がある。
しかし、その規制があるゆえにアイデアを凝らして面白いCMができあがるのだ。
日本に比べればアメリカには放送禁止用語はないに等しいけれど、
それでも規制はあるわけで、クリエイターたちはその規制を創意工夫のためのハードルと考えているとのことだ。


日本の場合は、そのハードルを越える努力をしようともせずにすぐに自主規制してしまう。
その積み重ねが、放送禁止歌という異様なものを作りあげているようだ。


ちなみに2001年現在は放送禁止歌というものは文書的には存在していないらしい。


座頭市』は今では放映できないけれど、めくらという言葉はあの作品では必要不可欠なわけで、
その意義も全く無視して一切合財消してしまうという姿勢は、表現という観点からすればどうにかしないといけないはずだけど、
もうどうしようもないのかもしれない。


ノートルダムの鐘』というディズニーアニメがあったけれども、
あの題名に首を傾げた人は少なくないだろう。
原題を見ても『The Belle of Norte Dane』。
やはり、向こうでもせむしは駄目なのか、と当時思ったけれども、
実はやはり原題は『The Hunchback of Norte Dane』。
つまり、日本は原題さえも変えたのだ。ディズニー相手にそこまでするなら、


表現に対してもっと突き詰めて考えられるはずだ、という作者の言葉が皮肉な笑いを誘った。
差別問題なんかの入門書としては、読みやすいし意外にいいかもしれない。オススメ。