おおかみこどもの雨と雪

『おおかみこどもの雨と雪』鑑賞



苦学生なんだから、もうちょい計画的に家族設計しろよ、という物語を根底から覆しかねない忠告がずっと頭の中で尾を引いてましたが、それを無視すれば、非常によく作られています。


細田監督がインタビューでも言ってるけど、13年間を2時間で描いているのが見事。時間経過が巧みで、それはアニメならではの表現と、小道具による演出の二つで見せていく。個人的には同棲を始めた頃の食卓や家具が増えていく様子が好き。
時間経過を効果的に見せるために、自然豊かな田舎に舞台が設定されているんだけど、そう考えさせない運びも上手い。


物語は、大事件が起きるわけでもない日常を描いている。
でも、大雪が降ったとか、畑を耕すとか、入学式とか、それぞれがその家庭においては大事件なんだよね。それが、巧みな時間経過とあいまって、全く飽きさせない。
また、雨と雪の決断、自然の荒々しさ、物語的クライマックスが重なりあっていく情感の盛り上げ方も上手い。
向こう側を選んでしまうラストに寂しさを覚えちゃうのは、人間のエゴなのかなぁ。自身で考え、自身ができること、として選んだ道なのだから、応援すべきなのかもしれないけど。


よく話題になる、俳優が声を当てる問題だけど、個人的には上手ければどうでもいいんだよね。この作品においては、宮崎あおいは下手でも不自然でもないんで、いいんじゃないでしょうか。あと、菅原文太はやはり味わい深いね。


ところで、「シェパードとなんかの雑種」というセリフは、高度なセクハラですか?(笑)

HABEMUS PAPAM

『ローマ法王の休日』鑑賞



予告編を見た人ならば、「こんな映画だろう」という予想がつくと思う。
確かに、基本それは間違えではないんだけど、ある意味想像を絶したラストが待っている。


完全に学級委員レベルのコンクラーベ、ゲームに興じたり観光がしたい枢機卿たち、役者志望だった過去を思い出す法王、など人間臭く、同時に愛すべき存在としてカトリックとトップにいる人々を描いている。
特に、本筋には全く関係ないバレーボールは感動的。


ただ、ラストも人間臭さ、という点では普通の行為なんだけど、それを異常事態と見せてしまう、宗教というシステム。
あんなにバレーボールを楽しんでいたのに、プログラムが動き始めれば、一瞬で醒めてしまう宗教者たち。これは、「日本人は宗教に無頓着だからピンと来ない」と思ってる以上に、多くの人がこのシステムに組み込まれていることがわかる。だからこそ、ラストはポカーンなんだよね。