SUNSTONE

 
 

 「待って! 閉じないで! これは、ホットなレズビアンのボンデージ・セックスを描いた本よ」
「よし。これでつかみはオーケーだわ」
というつかみが見事w

ボンデージ・セックス愛好家のレズビアンカップルの自伝的作品という体をなしている。
カバーアートはセクシーだし、実際、内容も性的に露骨。それに惹かれて手にとって見ると、やはり冒頭の惹句どおりのコミックなんだけど、そこに描かれているのは、SMBDの同性愛者だけではなく、あらゆる人に共通する普遍的なコミュニケーションの物語なんだよね。

ネットで出会った二人がオフラインで合う前のドキドキと不安感は、嗜好にかかわらず、誰もが共有できると思う。
そして、作品の根幹をなしているSMプレイは、一歩間違えば大怪我してしまうからこそ、信頼を基盤にしたコミュニケーションのゲーム。Sが一線を越えないことをMは信頼し、SはMが一線を越えさせないことを信頼している。

人間が二人以上集まれば、そこにコミュニケーションが生まれ、SMプレイに限らず、愛情・友情は信頼と尊重のやりとり。
「ホットなレズビアンのボンデージ・セックス」を描きながら、万人に共通する「互いへの思いやり」を描いている。

3巻までは、アリー(女王様)とリサ(奴隷)の友情と愛情とSMセッションが全て右肩上がりに高まっていくんだけど、4巻でもうひとりの奴隷が加わることによって、二人の関係に亀裂が入り、相手と自分を見つめ直していくことになる。
1~3巻もエロコメとしてすごい好きだったんだけど、このロマンス定番の冷却期間が輪をかけて面白い。
すれ違いも、この二人だからこそ、ではなく、やはり誰にでも起こりうるディスコミュニケーションによるもの。

また、4巻以降で目立つのが、ディスコミュニケーションの展開になると同時に、増えた絵柄のバリエーション。
これまでは、セッションへの感情のクロックアップを表すような艶っぽい超美麗アート(大ゴマ)と、普段のちょっとラフな筆致の二つだったのが、落書き風やディフォルメ表現が出てくる。特に幼児アリー&リサのコマはお気に入りw ネガティブ・リサもいい。

キャラとしては、アリーがやっぱ好き。
プレイ中は隙のない女王を演じるけど、普段はちょいちょい抜けた表情を見せる。何より眼鏡w
……なんだけど、後半はリサが非常に目立ってくる。
二人の関係に亀裂が入るまでは、リサは「奴隷」として「ご主人様」のアリーに従っているだけで、物語の語り手であるにもかかわらず、キャラクターとしてはかなり控えめ。
しかし、「主従」が壊れたことによって、「一組」が「二人」になり、そこで初めて、人間として対等に自身と相手を見つめ直していく過程で、彼女のキャラクターが魅力的に見えてくる。

物語の最初で、これはアリーが書いている自伝的作品だということは明かされているのだけど、果たしてそれは信用できる語り手なのか? それは最後まで読めばわかります。

5巻で二人の話は一区切りだけど、以降、サブキャラたちを主人公に据えたシリーズが続くそうなので、そちらも楽しみ。
アランはホントにいいやつだよなぁ。

サンストーン vol.1 (G-NOVELS)

サンストーン vol.1 (G-NOVELS)

 
サンストーン vol.2 (G-NOVELS)

サンストーン vol.2 (G-NOVELS)

 
サンストーン vol.3 (G-NOVELS)

サンストーン vol.3 (G-NOVELS)

 
サンストーン vol.4 (G-NOVELS)

サンストーン vol.4 (G-NOVELS)

 
サンストーン vol.5 (G-NOVELS)

サンストーン vol.5 (G-NOVELS)

 

 

エレクトリック・ステイト  THE ELECTRIC STATE

エレクトリック・ステイト THE ELECTRIC STATE

 
ナタンと呼んで―少女の身体で生まれた少年

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バットマン:イヤー100 (ShoPro Books)

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声の物語 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5044)

声の物語 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5044)

 

 

仏ノートルダム寺院で大規模火災 尖塔が崩壊

 
これはショックな出来事。 
見に行きたいものは、チャンスがある内に行かないとダメだな、と思ったのは、バーミヤン大仏が破壊されたときなんだよね。
今回のような不慮の事故があるかもしれないし、テロリストがぶっ壊すかもしれないし、国際情勢が悪くなるかもしれないし、自分の体調が悪くなるかもしれないし。
ソコトラ島は行きたいけど、テヘラン通らないといけないのがなぁ…

 

 

翼ある歴史 図書館島異聞 (海外文学セレクション)

翼ある歴史 図書館島異聞 (海外文学セレクション)

 
ヘルボーイ・イン・ヘル:誰が為に鐘は鳴る (DARK HORSE BOOKS)

ヘルボーイ・イン・ヘル:誰が為に鐘は鳴る (DARK HORSE BOOKS)

 
グウェンプール:さよならするのはつらいけど (MARVEL)

グウェンプール:さよならするのはつらいけど (MARVEL)

 
アベンジャーズ:ディスアセンブルド (MARVEL)

アベンジャーズ:ディスアセンブルド (MARVEL)

  • 作者: ブライアン・マイケル・ベンディス,デビッド・フィンチ,オリビエ・コワペル,ジョージ・ペレス,アレックス・マリーヴ,スティーブ・エプティング,リー・ウィークス,マイケル・ゲイドス,エリック・パウエル,ダリック・ロバートソン,マイク・メイヒュー,デビッド・マック,ゲイリー・フランク,マイケル・エイボン・オエミング,ジム・チェウン,スティーブ・マクニーブン,御代しおり
  • 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
  • 発売日: 2019/04/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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The Lego Movie 2: The Second Part

『レゴ(R) ムービー2』鑑賞
http://wwws.warnerbros.co.jp/lego/index.html

世界中で親しまれるブロック玩具の「レゴ」を題材にアニメーション化し、大ヒットを記録した「LEGO(R) ムービー」の続編。ブロックシティが襲われた恐ろしい事件から数年後、平和な日常が続いていた街に謎の宇宙人が現れたことをきっかけに、ブロックシティはすっかり荒廃し、誰もがすさんでしまう。そんな中で、エメットだけは相変わらず明るく、ごくフツーの日常を過ごしていた。しかし、ルーシーやバットマンといった仲間たちが宇宙人にさらわれてしまい、エメットは仲間たちとの日常を取り戻すため宇宙へと飛び出し、ミュージカル好きなクイーンが支配する惑星へとやってくる。監督は「シュレック フォーエバー」「トロールズ」のマイク・ミッチェル。前作を手がけたフィル・ロードクリストファー・ミラーが製作・脚本。

前作が超傑作だっただけに続編は~~~と杞憂でしたよ。

LEGO的自分史から語らせてもらうなら、最初は普通に街を作って、『マッドマックス2』をTVで見てからは、車に柵つけたり、バイクに槍つけたりして、次は黒マジックでオリジナルヘッド描いて、行き着く先は除光液で彩られた悪の道……そんなわけで、やはり製作者はよくLEGO遊びをわかってる。髭とか描いたもんw

以下ネタバレ

無印「レゴムービー」シリーズは、作品で唱えられるテーマが、世界への普遍的メッセージとLEGOの理念のダブルミーニングになっていて、しかもその両者の基盤に突き刺さる絶対的な力を持ってるんだよね。

前作では、「オンリーワンは素晴らしいけど、マニュアルどおりだって同じくらい重要。だって、LEGOスペシャルビルドは、まずマニュアルどおりに組むことから始まるんだから」というメッセージが物語・LEGO・実世界を同等に貫く。そして「すべてはサイコ~!」で締められる。
しかし、前作ラストでデュプロ星人の侵略という危機かつギャグシーンで幕が降ろされるが、これこそが今作のテーマに直結している。

そもそも「すべてが最高」なのは、皮肉なことに、前作のヴィラン、おしごと大王ひとりが管理し、逸脱を許さない世界だからこそ「すべてが最高」でいられるんだよね。独裁世界の独裁者の歌。
しかし、そこに異物たるデュプロ星人(=妹)が関わってくれば、「すべてが最高」でいられるわけがない。

おしごと大王がスパボンによって「すべてが最高」の状態で固めようとしたのに対して、今作のボスキャラ(?)わがまま女王は(ほぼ)基礎パーツだけで構成された変幻自在のビルド。それはLEGOは本来何でも作れるという象徴。
一方、もう一人のキィキャラクター、レックスは結果的に前作のおしごと大王(=父)と同じ、逸脱を認めない存在になってしまい、絶対的破滅アルママゲドンを引き起こしてしまう。

その破滅を回避しようとするのが物語の縦軸で、「たとえ見た目が違っても、その違いを認めあい、多様性を受け入れて協力すれば、より良い世界を作ることができるかもしれない」というのが今作のテーマ。だから、今回はエメットやバットマンらのいわゆる普通のLEGOも、メイヘム将軍を代表するFriendsも、幼児向けのデュプロもファビュランドも、何度も同じ画面に収まる。当然全て、ブロックとして互換性がある。
前作はマジックリアリズム的だのが、今回はマジックが現実の世界に影響を及ぼす。それによって、LEGO世界でも、現実世界でも、わがまま女王が象徴する理念を取り戻し、あらゆる意味での破滅を回避する。

この、物語・LEGO・メッセージがつながっていくさまが見事すぎて泣く。

「3」が作られるなら、ついにガリドーが攻めてくるのかなぁw

 

 

 

Monstres marins et autres creatures des eaux sombres

 

Monstres marins et autres creatures des eaux sombres

Monstres marins et autres creatures des eaux sombres

 

最近買ってる架空博物誌ではなく、『Boilerplate: History's Mechanical Marvel』系のフェイクドキュメンタリー本(たぶん)

海の怪獣を求めて、スコットランド、太平洋、オーストラリア、日本、と世界を巡る冒険の旅。

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フランス語なんで、特定の怪獣を探してるのか、海の不思議ならなんでも調査しているのかわからないけど、いつものように図版を見てるだけで楽しい。冒険日誌をもした装丁もいい。

洋書だとこの手の本をちょいちょい見るけど、まず訳されないよなぁ。
『Boilerplate』だけでも訳出してほしいんだけどなぁ。