The Dandelion Girl and other stories

たんぽぽ娘 (奇想コレクション)

たんぽぽ娘 (奇想コレクション)

永遠の名作「たんぽぽ娘」の著者ロバート・F・ヤングは、生涯で200編近い短編を遺した。その魅力を日本で初めて紹介した名訳者・伊藤典夫による編集でおくる、待望のヤング傑作選。「たんぽぽ娘」改訳決定版のほか、甘い男女の出会いを措いた変奏曲「河を下る旅」「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」「ジャンヌの弓」、宇宙クジラと交流する孤独な男「スターファインダー」、過去が保存された部屋の扉をあける「失われし時のかたみ」、遺作となった名品「荒蓼の地より」など、本邦初訳の7編を含む全13編を収録。


 収録作品
・「特別急行がおくれた日」The Day the Limited Was Late
・「河を下る旅」On the River
・「エミリーと不滅の詩人たち」Emily and the Bards Sublime 
・「神風」Divine Wind
・「たんぽぽ娘」The Dandelion Girl
・「荒寥の地より」What Bleak Land
・「主従問題」The Servant Problem
・「第一次火星ミッション」The First Mars Mission
・「失われし時のかたみ」Remnants of Things Past 
・「最後の地球人、愛を求めて彷徨す」Adventures of Things Past
・「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」Romance in an Eleventh-Century
・「スターファインダー」Starscape with Frieze of Dreams
・「ジャンヌの弓」L'are De Jeanne 

感想より先に、やはり表題作にまつわる騒動に言及したくなるよね。
激しくキャッチーな邦題だよなぁ。


その名前だけがこれほど数奇な独り歩きした(しかも日本限定で)SFもあまりないのではなかろうか? 
たんぽぽ娘」の訳出自体は、昔からいくつかあったんだけど、その全ての値段だけが高騰していき、いつしか翻訳SFの中でも、ひときわ目立つ幻の書に。聞こえてくるのは内容の面白さではなく、「読みたい」「所有したい」という欲求のみ。まぁ、プレミアに内容が関わることなんて他でもないけどね。
面白いのは、サンリオSFなんかと違って、プレ値で探し回っていたのが、SFプロパーではないことなんだよね。なぜなら、SF者なら、いつかこの本が出るであろう、ということはわかっていたから。思っていたよりも早く出たかな(笑)


雑談ついでに、個人的には、奇想コレクションが完結ということが感慨深い。
昔は集めるばかりで全く読んでなかったんだけど、ちょうど『夜明けのエントロピー*1が出たあたりから、10年後を見据えて「『○○』も読んでないの?」という嫌なオタクを目指して読むようになったので。で、もう10年か……


さて。
盛り上がってる中なんだけど、あんまりヤングの作品は好きではないんだよね。
甘ったるいのではなく(甘酢は大好き)、登場する女性が非常に男にとって都合がいい女であると同時に、男はあくまで受け身で後腐れなし。この草食系童貞臭が、ボーイ・ミーツ・ガールものが多いにもかかわらず、女性不在を感じさせてしまうんだよなぁ。そのくせ、妄想(欲望)ではなく倫理を持って動いているかのような振る舞いをする。もしくは、同族嫌悪かも(笑)
表題作だって、奥さんがありながら若い子との逢瀬を楽しみ、しかもその娘も昔から彼のことが好きだった……て都合良すぎるよ! 「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」もなんでいきなりキスするかなぁ。


今回、この短篇集を読んでも、その印象はあまり変わらなかったかな。全体的にリーダビリティがいいのは認めるけどね。
その中で、「荒寥の地より」はかなりお気に入り。
甘さはノスタルジーになり、発見する真実によってもたらされるのは未来への懐かしさと寂しさと希望。個人的には細田版『時をかける少女*2を思い出した。


さらに次の短篇集を計画中らしいけど、「花崗岩の女神」を入れて欲しいなぁ。

オール・クリア2 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

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ミステリガール (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

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