Vechnyi Khleb



『永久パン』 アレクサンドル・ベリャーエフ〈岩崎書店ベリャーエフ少年空想科学小説選集6〉


ドラえもん』のバイバイン*1の元ネタとして有名(?)な作品。
アフター0』の「雪に願いを」*2とも展開が似ていて、インスパイア元かな?


この世から飢えをなくすために博士が開発した、勝手に増える永久パン。
しかし、企業がそれを嗅ぎつけ、勝手に売り始めてしまう。
それが世界の破滅につながるとも知らずに……


旧ソ連時代の作品で、かなり直球の資本主義批判なんだけど、永久パンが過剰に増え始めてからがかなり面白い。
増殖のスピードが早くなり、捨てるのはもったいないけど、そのままでは家が埋まってしまうため「食べ屋」が現れたり、労働をなくすことが目的だったのに、逆に永久パンを除去するために延々と働かざるえなくなってしまう。あんなにみんな欲しがっていた永久パンを押し付け合うために戦争が起きるも、増えすぎた永久パンに遮られ、まともに進軍できなくなってしまったり。
陸も海も武器が効かない不定形物体で埋まってしまうのは「ひる」*3と通じるものがあるんだけど、こちらはそれが食べ物で、しかも除去として「戦闘」ではなく果てしない「労働」になってしまうのが世界破滅ものとしてもユニーク。


永久パンときくと、焼きたてのパンがポコッと増殖するイメージかもしれないけど、出てくるのは、作中で「カエルの卵」と形容されるドロドロの液体。味は美味しいらしいw
『男のゲーム』*4といい、『タクシデルミア』*5といい、旧共産圏の物語に出てくる食べ物はどうして、こう不味そうなんだろう……