Doman e un altro mondo

『明日は別の世界』ダリオ・トナーニ〈イタリアSF文庫〉



『モンド9』*1のダリオ・トナーニの短編集が、まさか同人誌として翻訳されるとは!
しかも、翻訳は、やはり『モンド9』の久保耕司氏でちゃんとしてるし。
レアケースだとは思うんだけど、ジャンル読みとしては、こういう方法で、非英語圏(英語でも!)の作品が読める光明を見た気がする。
頑張ってください!

収録作品
「赤い海泡石」
「歩く者、アブラーチェ」
「痙笑」
「プラスティック都市のかけら」
「朝の埃だらけの貝殻」


『モンド9』を読んだ人ならわかると思うけど、どの短編も気持ち悪い(褒め言葉)
健やかな世界が一つもなく、錆と腐臭とゴミに溢れた世界。
イデア過剰も特徴で、例えば、カバーストーリーでもある「赤い海泡石」は、干からびたアドリア海での護送、タイムトラベルして襲い来る二次大戦中の戦闘機、謎の赤い物質、とバラバラのネタを化学薬品で煮込んで、目に染みるような作品にしあがっている。その無理やり結合さた軋みがまた魅力。


「痙笑」以外、舞台は遠未来(ファンタジー)で、世界は崩壊しかかってて、文明の再建どころか、ゴミを集めてかろうじて生活しているようにしか見えない。
しかし、そんな世界でも、人々は今日を生きる努力をし、明日を迎えようとする。それが完全な崩壊を先延ばしにしてるに過ぎなくても。


みんなよかったんだけど、「痙笑」が一番気持ち悪くてよかったかなぁw


あとがきにある『Infect@』も、どこかで訳出されることを期待!