Zootopia



『ズートピア』鑑賞


動物たちが高度な文明社会を築いた世界「ズートピア」を舞台に、ウサギの女の子ジュディが夢をかなえるために奮闘する姿を描いたディズニーアニメーション。監督は「塔の上のラプンツェル」のバイロン・ハワードと「シュガー・ラッシュ」のリッチ・ムーア。どんな動物も快適な暮らしができる環境が整えられた世界。各々の動物たちには決められた役割があり、農場でニンジン作りに従事するのがウサギの務めだったが、ウサギの女の子ジュディは、サイやゾウ、カバといった大きくて強い動物だけがなれる警察官に憧れていた。警察学校をトップの成績で卒業し、史上初のウサギの警察官として希望に胸を膨らませて大都会ズートピアにやってきたジュディだったが、スイギュウの署長ボゴは、そんなジュディの能力を認めてくれない。なんとかして認められようと奮闘するジュディは、キツネの詐欺師ニックと出会い、ひょんなことからニックとともにカワウソの行方不明事件を追うことになるのだが……。

凄ぇ〜面白い!


白馬の王子様は自分から捕まえに行く、という最近のディズニーのモードを踏まえつつ、人種差別も描きながら、異世界ミステリの上質なバディ・ムービーとして成立している傑作。


まず、ジュディがカワイイんだよね。
そりゃ、アメリカで薄い本的なイラストが描かれちゃうわけですよw
ヨガクラブでの恥じらう仕草とか最高! 終盤のニックからペンを取り返そうとする仕草も最高!
全部最高!


もう一人の主人公は詐欺師のニック。
冒頭から、キツネは信用出来ない種族、と観客も刷り込まれているんだけど、彼のアイスキャンディ詐欺のシークエンスがもう楽しい。
あれだけで彼が町に精通し、各地域を行き来していることがうかがえる。


冒頭を見ているだけで、どういう世界なのか飲み込める。
しかし、その後も手を休めることなく、細部を見せていく。
ジュディのiPhoneがニンジンマークだったり、海賊版DVDがディズニーアニメのパロだったり、小動物(ネズミ大)専用の待ちとか、狼の潜入捜査官は羊に化けてる、とかそういうのを追っていくのも楽しいんだけど、それら細部の遊びが物語と遊離しておらず、さらには、そこで描かれる伏線を脅迫的wなまでに拾っていく。


物語冒頭、「太古、肉食動物は草食動物を狩っていた」的な台詞から始まり、「でも、今では手を取り合っている」と希望に続く。中盤でも同じ台詞が出てくるんだけど、全く逆の意味として使われ、ズートピアの問題点をあぶり出してしまう。
幼いジュディをいじめるキツネのギデオン、というシークエンスは、キツネ(肉食動物)は悪者、というイメージを強化し、そのキツネのニックとのコンビになる物語の前フリではあるんだけど、ジュディの故郷はウサギの町だから、ギデオンは圧倒的マイノリティで、おそらく差別されているんだよね(この推測は、ニックの過去でフィードバックされる)。防キツネグッズも普通に売ってるみたいだし。
彼女の両親が全く悪意なく差別していることが、根が深く、普遍的な問題。


最初の10分くらいで、この調子。


かわいらしいキャラクター、凸凹コンビ、タイムリミットサスペンス、スピード感あふれるアクション、無数の小ネタ、ギャグ、とエンタメ要素がこれでもかと積み重ねながら、終始一貫しているのは、見た目で判断(差別)するな、というテーマ。
初の小動物の女性警官ジュディをはじめ、ぱおんぱおん、ミスター・ビッグ、肉食動物、草食動物、ラストの暴走車……
中盤に出てくる、抗議活動しているクーガー(?)への「ジャングルに帰れ!」に対する「サバンナ生まれよ!」というシークエンスは、短いながら上手いよなぁ。
しかも、このテーマがテーマだけで終わらず、ちゃんとエンタメとして回収されるのがお見事。


キュートなニンジンペンの使い方も見事だし、まぁ、ナマケモノやシンリンオオカミは純粋に笑っちゃうし、褒めるところしかないよ。


あえて言うなら、小動物犯罪用に、小動物の警官は必要じゃない?


字幕館は少ないけど、吹替も十分いいですよ。
上戸彩はちゃんと上手いけど、驚いたのはサバンナ高橋。名前で選ばれたような気がしないでもないけど、完全に声優がやってると思った。
ガゼルの声だけは子供っぽすぎてイマイチだけど。


以下、ややネタバレ。


カワウソがミスター・ビッグに相談しようとしていたことは、結局明かされないけど、なんだったんだろう?
彼は花屋だったから、実は「夜の遠吠え」を横流ししていて、事の重大さに気づいたとか?
あと、イタチが球根盗むシーンで、花屋の入口に羊が二頭、一瞬映るけど、あれはラストの羊か? 


ベルフェザーのヴィランっぷりもよく、続編も見てみたいなぁ。