TEN SORRY TALES
- 作者: ミック・ジャクソン,デイヴィッド・ロバーツ,田内志文
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2016/02/12
- メディア: 単行本
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金持ち夫妻に雇われ隠者となった男や、蝶の修理屋を志し博物館の標本の蝶を蘇らせようとする少年。日常と異常の境界線を飛び越えてしまった人々を描く奇妙で愛おしい物語。
収録作品
「ピアース姉妹」
「眠れる少年」
「地下をゆく舟」
「蝶の修理屋」
「隠者求む」
「宇宙人にさらわれた」
「骨集めの娘」
「もはや跡形もなく」
「川を渡る」
「ボタン泥棒」
『穴掘り公爵』*1のミック・ジャクソンの短編集。
イラストは『モンタギューおじさんの怖い話』*2などのデイヴィッド・ロバーツ。
趣味からすると「奇妙な話」がちょっと上品なんだけど、なかなか楽しめました。
いつもと変わらぬ日常を送る人々が「天啓」を得て、そこからの行動が過剰になった挙句、その異常が日常にシフトする、という物語が多い。
「地下をゆく舟」や「蝶の修理屋」の主人公たちは、しばらくたってから、あれが「運命の出会い」だったなぁ、と懐かしむのかもしれない(「ピアース姉妹」は客観的には異常のままだけど、姉妹にとっては幸せな日常を送っている)
一方、「隠者求む」のように異常を日常化できないと、不幸な結末が待っている(主人公たちの責任でもあるけど)。ただ、これも、隠者にとっては幸せなのなぁ……。
「宇宙人にさらわれた」は異常事態を元の日常に戻す物語(何も起きてはいないんだけど)で、「もはや跡形もなく」は日常に戻れなかった物語。
そういう話ばかりではなく、「川を渡る」や「ボタン泥棒」は頓智話っぽい。
特に「川を渡る」のオチは小咄系で大好き。