DROHNENLAND

ドローンランド

ドローンランド

『ドローンランド』トム・ヒレンブラント〈河出書房新社〉読了

顔面を吹き飛ばされた欧州議会議員の死体が発見された。ユーロポールの主任警部ヴェスターホイゼンは、アナリストのアヴァと協力して捜査に乗りだす。大小さまざまなドローンによってすべてがデータ化された監視社会。アメリカは没落し、ブラジル、アラブ、EUなどが太陽光や波動エネルギーをめぐって覇権を争う。シミュレーション空間「ミラースペース」を駆使して捜査は進むが、新EU憲法の採択に向けて、そこには巨大な謎が隠されていた。ユーロポール長官の老獪なフォーゲル、自由党女性党首ヤナ・スヴェンソン、情報多国籍企業タルコンの総帥ジョン・タラン、政治スキャンダル専門の謎のジャーナリスト・ジョニー・ランダム、影の警察RR…。

なんか、懐かしい感じがするんだよなぁ。
サイバーガジェットにあふれ、それらにギリシア神話からの命名がされてるって、何たる『アップルシード*1感!


主人公のヴェスターホイゼンは、とっとと相棒のアヴァとヤッちゃえよ! とモヤモヤw


それはさておき。


誰もがグラス型の端末を装着し、眼に見えないほどのドローンがあらゆる所をデータ化している監視社会。
……なんだけど、「監視社会」という言葉から連想されるディストピア感はなく、むしろ、作者は、あらゆるものがデータ化されているがゆえに可能な、シミュレーション空間「ミラースペース」を舞台にした事件とトリックを描きたかったように思える。
未来描写も、顕著なディストピア感はないかわりに、ロボットの相棒や宇宙船があるわけでもなく、コーヒーがえらく高くなってたり、アメリカが没落していたり、ブラジルが超大国化しているくらいの、望遠鏡で見えそうな未来。ポルトガルも豊かな国になってるのは、波力発電だけでなくポルトガル語圏のブラジルの影響もあるのかしら?


「ミラースペース」は触覚さえあるようなシミュレーション空間。時間の巻き戻しも可能だし、足跡や破片も確認できる。個人的には、『アイアンマン3*2や『アーカム・ビギンズ』*3の捜査シーンを頭に思い浮かべた。
現場に行かずとも、そのシミュレーション空間で捜査できてしまう。
陰謀も、タネも、そのシミュレーション空間をめぐるものなので、十分SFミステリと言えると思うけど、これは、ある種の叙述トリック? 読者が、登場人物たちと同じ目線になってたってことは、アリでいい……?


物凄く面白かったり、尖った部分があるわけではないんだけど、飽きずにするすると一気読み出来てしまう。
意図して『アイアンマン3』を例えに出したわけではないんだけど、ひじょうに映像的。
要するに、ハリウッドエンタメ的作品。