The Miniature Wife and Other Stories

ミニチュアの妻 (エクス・リブリス)

ミニチュアの妻 (エクス・リブリス)

『ミニチュアの妻』マヌエル・ゴンザレス〈白水社エクス・リブリス〉

ハイジャック事件、難病持ちの音楽家、オフィスで働くゾンビ、消えた文化人類学者…「ポスト・アメリカ」世代の新星による第一短篇集


収録作品

「操縦士、副操縦士、作家」
「ミニチュアの妻」
「ウィリアム・コービン その奇特なる人生」
「早朝の物音」
「音楽家の声」
「ヘンリー・リチャード・ナイルズ その奇特なる人生」
「殺しには現ナマ」
「ハロルド・ワイジー・キース その奇特なる人生」
「動物たちの家」
「僕のすべて」
「キャプラ?号星での生活」
「フアン・レフヒオ・ロチャ その奇特なる人生」
「セバリ族の失踪」
「角は一本、目は荒々しく」
「オオカミだ!」
「さらば、アフリカよ」
「フアン・マヌエル・ゴンサレス その奇特なる人生」
「ショッピングモールからの脱出」

異星生物との戦い、ゾンビ、狼男など、ジャンルフィクションを材料にしているのが特徴の一つ。
その中では「キャプラ?号星での生活」がお気に入り。完全に『DOOM』(かFPS)で脳内変換。自由意志を奪われながらも、抗えない戦士の物語。自分の選択したとおりに人生が進んでるわけないじゃん、とつきつけられるかのよう。


異色・奇想系に分類されるような最近の短篇は、コミュニケーション/ディスコミュニケーションを扱っていることが多い(気がする)。


本書もその例に漏れないんだけど、作品を通して、「聞こえる/聞こえない」という行為が繰り返し取り上げられるのが、もう一つの特徴。
表題作は妻が縮小されてしまったが故に、その声が聞こえなくなる。
論文捏造を描いた「セバリ族の失踪」は、その一族のイニシエーションに言葉を発しない時期が記される。
それらが強く現れているのが「早朝の物音」や「音楽家の声」あたり。
前者は聴力を除去した夫婦の物語。特に後者は、題名どおり音楽家の声がどうやって出ているのか、彼が完成させようとした曲はどのようなものだったのか、という謎は横に置いといて、彼の声を「聞く」ことに終始する。


途中に挟まる「その奇特なる人生」シリーズは、その名のとおり、奇妙な人生を描いた掌編。
ここでもやはり、喋れない、言葉を発しない、という表現がキーとなる。


お気に入りは、「ミニチュアの妻」「ウィリアム・コービン その奇特なる人生」「音楽家の声」「キャプラ?号星での生活」「セバリ族の失踪」「フアン・マヌエル・ゴンサレス その奇特なる人生」