TUNNELING TO THE CENTER OF THE EARTH

地球の中心までトンネルを掘る (海外文学セレクション)

地球の中心までトンネルを掘る (海外文学セレクション)

『地球の中心までトンネルを掘る』ケヴィン・ウィルソン〈東京創元社海外文学セレクション〉

これは「あなた」だったかもしれない人たちが織りなす、孤独と共感についての11の物語。代理祖父母派遣会社で引く手あまたの「祖母」として働く女性、人体自然発火現象で死ぬことを恐れながら弟と暮らす青年、折りヅルを使った奇妙な遺産相続ゲームに挑む男たち、ある日突然思いつき、裏庭でひたすらトンネルを掘りはじめた三人の若者……少しだけ「普通」から逸脱した日々を送る人々の、生活と感情の断片を切り取った挿話が、不思議としみじみした余韻をもたらす短編集。シャーリイ・ジャクスン賞、全米図書館協会アレックス賞受賞作。


収録作品
「替え玉」
「発火点」
「今は亡き姉ハンドブック:繊細な少年のための手引き」
「ツルの舞う家」
モータルコンバット
「地球の中心までトンネルを掘る」
「弾丸マクシミリアン」
「女子合唱部の指揮者を愛人にした男の物語(もしくは歯の生えた赤ん坊の)」
「ゴー・ファイト・ウィン」
「あれやこれや博物館」
「ワースト・ケース・シナリオ株式会社」

どうよ、面白そうなタイトルが並んでるでしょう。
そのファーストインプレッションはハズレてないよ。


ちょっとずれた世界の、普通の人々の物語。


お祖母ちゃんの替え玉を生業とする女性。
毎日毎日、部屋一面のスクラブルの駒を仕分ける生年。
地中にトンネルを掘りはじめ、そこで日々を過ごす友人三人。
何の役にも立たないガラクタ博物館のキュレーター。
起こりうるあらゆる最悪のシナリオをシミュレートする会社。


彼らの日常は、我々から見れば奇妙なものばかり。
そんな彼らが、その日常から一歩逸脱し、人生の転機に訪れる驚きや喜び、不安を、我々は共感することができる。どんなに雑学を溜め込もうとも、どれだけの最悪の未来を予想しようとも、世界は変われど、「その瞬間」に戸惑うのは皆同じ。
奇妙な設定を楽しんでいるつもりが、いつの間にか、彼らの人生の先行きを見つめていた自分に気づく。どんな不思議な世界も、人生の決断には霞む。それがどんな些細なものであろうとも、当事者にとっては一大事なのだ。


「あれやこれや博物館」に「この世界ぼくの居場所はない」と残して自殺する少年が出てくるけど、その言葉とは裏腹に、収録された物語には、それぞれに居場所は存在することが力強いメッセージとして語られている。


お気に入りは、「替え玉」「発火点」「今は亡き姉ハンドブック:繊細な少年のための手引き」「モータルコンバット」「地球の中心までトンネルを掘る」「あれやこれや博物館」「ワースト・ケース・シナリオ株式会社」
いや、みんな良かったですよ。


特に、「モータルコンバット」のあの感じは共感しちゃうわw